誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、ネット投票の利便性のひとつである“オッズ投票”に挑戦した顛末についてお届けする。
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ネット投票にもすっかり慣れ、キー操作も軽快である。一方で体は重い。
運動不足だ。思えば、競馬場通いは格好のトレーニングになっていた。府中にしても中山にしても、もちろん京都・阪神でも、競馬場の広い空の下に辿り着くまでにずいぶんとカロリーを消費した。場内でもパドックと本馬場の間をサクサク動いた。ダッシュしたり階段をかけのぼったり。腹の底から大声を出したり。
それがゼロだ。そこでレースの合間に腕立て伏せや反復横跳びを……との珍案も過ったが、そんなものは本筋じゃない。動かないぶん頭を使えばいいのだった。
ネット投票での馬券(?)の買い方は5通り。通常投票、オッズ投票、マークカード投票、予想印投票、パック投票。ゲートが5つもある。
もっぱらマークカード投票だ。競馬場での買い方と同じで慣れ親しみ、他は目に入らなかった。しかし買い目が増えると面倒なこともままある。そこで他の買い方にも手を伸ばしてみた。オッズ投票である。
やってみると便利だった。3連複を狙うときなど、オッズがわかりやすく、決断の参考になるのだった。