新型コロナウイルス感染拡大を防ぐためと休業要請を求められた時期に、生き残りをかけてビデオ接客で収入確保につとめる「オンラインスナック」が話題になった。スナックとは、ママもしくはマスターがカウンター越しに水割りをつくるなどして対面接客をする、セット料金3000円程度で楽しめる店のことで、多くはカラオケがある。前回の東京五輪、1964年前後に生まれた業態と言われるスナックが、いま、全国で危機に直面している。仕事や人生がいまひとつうまくいかないと鬱屈する団塊ジュニアやポスト団塊ジュニアを「しくじり世代」と名付けた俳人で著作家の日野百草氏が、今回は、常磐線沿いのスナックママ40代の嘆きと憤りをリポートする。
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「自粛も終わってこれからと思ったのに、お客さんが全然来ないの」
常磐線沿線の駅近、茨城県南のスナック。本当に小さな店で、私は雨の中、指定された場所がわからず難儀した。ノンフィクションを執筆して以来、私の仕事用メールアドレスにはタレコミが来るようになった。そのほとんどはオタク関係の業界暴露や批判と、SNSの誹謗中傷相談で申し訳ないがスルーさせていただいているが、今回のように実際のお店や人物の話は行ってみようかという気持ちになる。
「コロナでここまでみんな変わっちゃうなんて思わなかった」
スナックのママは40代には見えない容姿、若々しくて美人だ。カラフルなプリントのワンピースは高級ブランドのもので、スレンダーなママによく似合っている。しかし店を始めた経緯やママの人生は話す気はないと最初にピシャリと言われてしまったのでここまでにとどめる。それ以外も話せないことが多いと現地で知らされて、申し訳ないが取材としては遠くまで来たのに少々空振りだ。
「スナックもキャバクラも一緒くただもんね、まったく、夜のお店ってひとくくりにされて迷惑よ」
緊急事態宣言はすでに解除されている。茨城県に至っては早々の解除で5月14日。休業要請そのものも6月8日には解除された。しかしママの店はこの2ヶ月近く閑古鳥で客足は以前の1割くらいだという。
「常連さんも全然来ない。連絡の取れなくなった人もいる。ちゃんと休業要請には従って、コロナ対策も小さな店で出来ることをやってるのに、理解されなくて」
歌舞伎町を始めとした夜の街のクラスター騒ぎは収まる気配がない。これはそのまま全国の夜の街、店も影響を受けている。ただでさえコロナウイルスの恐怖と三密とで客足が遠のいたあげくの自粛、そして解除後も続くクラスター ―― すべてが夜の店というわけではないが、悪目立ちしているのが現状だ。
「それに最近またクラスターでしょう? 『昼カラ』やってたスナック、北海道なんて遠い話なのに、同じにされちゃうのよ」