新型コロナウイルスの感染拡大が一段落したかに見える中国だが、現地ではいま感染警戒中に起きたさまざまな事件があらためて注目されている。中国の情勢に詳しい拓殖大学海外事情研究所教授の富坂聰氏がレポートする。
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コロナ禍のダメージが及ぶのは経済だけではない。生活環境が大きく変わることで人間関係にも深刻な影響が及ぶからだ。日本でもよく指摘されてことだが、対コロナの自粛生活では、あまりにも長い時間を狭い部屋で一緒に過ごしたことで夫婦仲がおかしくなるという現象が中国でも広く確認されている。
中国南部のデジタルシティー・深圳市では、離婚するための手続きの順番待ちが、「1ヵ月待ちになった」(5月末の『大河報』)ことが話題を呼んだ。それほど離婚の申請が殺到したのである。
人々が苛立てば、事件が増えるのも一つの道理だ。
同じく5月には広東省の夕刊紙『羊城晩報』が一組のカップルの喧嘩が思わぬ問題へと発展した事件を報じている。タイトルは、〈ボーイフレンドのスマホを盗み見た女が激怒 40階のマンションの窓から包丁を投げる 176万元(約2700万円)の高級車に直撃〉である。
タイトルを見れば話しの中身はおおよそ想像できるはずだ。要するに痴話喧嘩の末に激怒した女が包丁を手にボーイフレンドを追いかけまわした末の出来事だ。
事件が発覚したのはボーイフレンドの通報である。包丁を持って追われた男は自分の部屋に逃げ込み警察に連絡した。女はドアに数撃包丁を突き立てたがその後は静かだったという。
事件が妙な方向に進んだのは警察が現場に到着してからだ。警官が問題の包丁の所在を尋ねたところ、女は怒って外に投げたというのだ。マンションは正確には47階である。慌てて下に降りると、176万元の高級車の屋根の上に包丁が見つかった。もちろん車が無事であるはずもなくカップルには重い賠償が突き付けられたのだが、もし通行人がいたら、と考えたら、むしろ安い授業料だったのかもしれない。