新型コロナウイルスの完成拡大の影響で、おうち時間が増えているなか、散歩も不要な猫を飼いたいという人が増えているという。ミステリアスな生態と行動で私たちをメロメロにする猫の不思議な生態について、上野動物園の動物解説員などを務め『ざんねんないきもの事典』シリーズを監修した動物学者の今泉忠明さんに教えてもらった。
【Q.1】猫はなぜあんなに跳ぶの?
A. かつて木の上で待ち伏せ、狩猟していた頃のなごりです
「犬が横へ幅跳びをするのに対し、猫は上へ垂直跳びをするのが特徴。それも身長の4~5倍、1.5~2mの跳躍力で高所に登り、鳥を捕獲します。これは、猫の祖先が木の上をよく利用していたなごりです。ドアの上やカーテンボックスの上など、危なっかしい高所に登って見下ろすのが大好きで、高所から落ちても優れた三半規管とバランス感覚、筋肉や関節の柔らかさで着地の衝撃を緩和できる。忍者のような身体能力を持っています」(今泉さん・以下同)
【Q.2】猫にしつけができないのはなぜ?
A. 単独で狩猟して生きてきた自信家だから
「猫の祖先は樹上で単独狩猟生活をしていたため、仲間との協力や命令、社会性の概念がなく、単独で生きる自信があるから周囲にどうこう言われるのが嫌いです。しつけようと思ったら、猫がやりたがるように工夫が必要です。好奇心はあるので、それをうまく利用しましょう」
【Q.3】猫は退屈や寂しさを感じないの?
A. 飼い主が留守でも家で過ごすのが好き
「留守にすると寂しいのではないかと、旅行に連れて行く飼い主も多いですが、むしろ、猫は知らない場所へ行く方が不安です。飼い主がいなくても、いつも通りの環境で自由に過ごすのが好きなのです。もともと単独で生きていたので、寂しさや退屈は感じないんです」
【Q.4】猫の視力・嗅覚・聴覚は人間の何倍?
A. 静止視力以外は、さすがのポテンシャル!
「猫は動体視力がいいのですが、近くに置いたドライフードなど、止まったものを見るのは案外苦手です。聴覚は人間の3倍、嗅覚は30万倍と、音やにおいに敏感なので、猫と快適に暮らすには、間近でのくしゃみやテレビの音量に気をつけ、においのキツイ香水やアロマも控えたいところ。猫の脳にも人と同じ新皮質があり、子猫に狩りを教え、子育てをする点も人間に近いのですが、猫には基本的に虫歯はありません」
【Q.5】猫は子供が苦手で女性やお年寄りが好きなの?
A. 子供の気まぐれな行動がストレスに
「子供は急に遊びたくなって、しっぽをつかんだりするので、猫もいきなりやられてびっくりします。そもそも猫も子供も、どちらも気まぐれだから合わないんですね。その点、女性やお年寄りは仕草がゆっくりで、静か。それが猫にとっていちばん安心で落ち着くんです」
【Q.6】マイペースに見えて実は繊細な猫が嫌がることは?
A. 家の模様替えとじっと見つめるのはNG
「猫がいちばん嫌がるのは、環境を変えること。たとえば室内飼いの猫の場合、家具の配置を変えられるのが苦手です。彼らにとって家の中は縄張りなので、危険に備えて逃げる場所などは常に頭の中に入っています。それが変わってしまったら、パトロールしないと落ち着かないんです。また、じっと見られることも苦手です。にらまれていると思って敵意を覚えてしまいます。人間も“ガン”をつけられると嫌ですよね。それと同じです」
※女性セブン2020年7月23日号