コロナで訪日外国人や出張族の需要が見込めず、壊滅的な影響を受けているビジネスホテルやシティホテル。だが、新たな客層を呼び込もうと多くのホテルが狙い出したのが、若いカップルたちだ。ホテル評論家の瀧澤信秋氏が、業態のボーダーレス化が進むホテルの現状をレポートする。
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コロナ禍というワードもすっかり根付いた感があるが、自粛明けとなった今でも第2波を警戒する声は根強く、経済活動が元通りになったとはとても言い難い。ホテルについても、営業自粛要請の緩和に伴い再開する宿泊施設こそ増加しているが、フル稼働までにはハードルが高い。
さらに、小池都知事から再び県境をまたぐ移動について控える要請がなされたことで、宿泊施設としては地元のお得意さんやリピーターのような“ご当地顧客”を中心とした誘客の施策を練っているケースが多くみられる。インバウンド需要の回復もしばらく期待できないため、国内へシフトする動きがますます顕著になった。クルマで60分以内に行けるエリアでの観光を指す「マイクロツーリズム」の推進も、国内へ目を向ける動きとして注目されている。
そのような状況の中、水面下でみられる動きが“カップルズユースの取り込み”だ。
思い起こせば、インバウンドバブルに突入する前まで、一般の宿泊施設は日本人カップルの取り込みに躍起になっていた。カップルズユースとホテルといえばレジャー(ラブ)ホテルを想起するが、いまとなってはターゲット層によってホテルの業態を線引きするのは難しい。筆者も連載している業界専門誌から6年前に初めて来たオファーは、“一般ホテルに奪取されるカップルズユースとレジャーホテルの危機感”というテーマだった。
ところで、アパホテルが6月30日までの期間限定で“1泊2500円”という直販プランを売り出して話題になった。筆者も繁華街に立地するアパホテルへ宿泊取材したが、若いカップルの姿が多く印象的だった。とあるカップルの話によると、お互いに実家暮らしで2500円だったらレジャーホテルの休憩よりも安く、宿泊すれば気兼ねなく飲みにも出られるから最高だと語っていた。