新型コロナウイルスの影響で家庭用消毒剤が品薄だ。厚生労働省は『新型コロナウイルスの消毒・除菌方法について』の情報を発信し、新型コロナウイルスに有効な界面活性剤が含まれる洗剤などの製品リストも公開されている。
免疫力が落ち、新型コロナだけでなくいろいろな病気のリスクが高まる老親のためにも、家の中を見直したい。長年、病院の環境衛生管理に携わり“掃除で健康を守る”がモットーの医療環境管理士、松本忠男さんに、コロナにも負けない掃除テクを聞いた。
【教えてくれたのは…】
健康を守るお掃除士/松本忠男さん
30年以上にわたり病院の環境衛生に携わり、医療関連サービスのトータルマネジメントを行う㈱プラナを設立。現場で体得したノウハウを多くの医療施設、掃除会社に発信。近著に『ウイルス・カビ毒から身を守る!』(扶桑社刊)など。医療環境管理士。
◆感染予防の基本は消毒よりまず掃除
「目に見えないウイルスを恐れ、やみくもに消毒剤をまいても実は意味がありません」と、松本さんは言う。
新型コロナのような肺炎に至るウイルス、秋頃から流行するノロウイルス、食中毒菌、アレルギーを起こす花粉など、家の中にはいろいろな病原体がいる可能性がある。消毒というと、それらを一掃できるようなイメージだが、決してそうではないという。
「病気にならないための掃除ということなら、医療現場の清掃法が参考になります。基本は【1】洗浄、【2】消毒、【3】滅菌。
まず汚れを取り除く。汚れの中にいちばん病原体が潜んでいるため、汚れごと物理的に病原体を排除するわけです。その後に消毒。ただしこれはすべての菌の殺菌ではなく、一部を死滅させて感染リスクを下げるのが目的。そして手術室など特殊な場所で必要な滅菌。これは菌をゼロにします。一般の家庭で必要なのは【1】【2】まで。洗浄、つまり掃除がいちばん重要なのです」
家庭内にいる病原体の多くも、ホコリの中に取り込まれている。ホコリもまた小さな繊維くずの集まりで、フワフワしたかたまりになるのは相当にたまった状態だ。
「消毒剤は汚れがない状態でなければ、力を発揮できないのです。ホコリの上から消毒剤をかけて、一部のウイルスは死滅するかもしれませんが万全ではありません。しかもホコリは残ったまま。消毒剤自体にも毒性があり、使いすぎれば人体にも有害です。感染対策としては目に見えない段階からのホコリ取りが重要なのです」