新型コロナの感染者数が再び急増しているが、身の回りのクラスター感染や市中感染でもっとも不安視されているのが、通勤電車だ。自粛明けの経済活動再開によって、朝夕ラッシュアワーの光景は元通り。駅や電車内は通勤客でごった返している。このまま“通勤感染”を防ぐ3密対策は取らなくてよいのか──。ジャーナリストの山田稔氏が警鐘を鳴らす。
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都知事選が終わったとたんに新型コロナの新規感染者数が激増している。東京都の感染者数は7月9日=227人、10日=243人と2日連続で過去最多を更新した。
7月13日には新宿の劇場での集団感染が明らかとなったが、感染の再拡大ともいえる状況を前に菅官房長官は「東京問題」と都の対応を批判。小池都知事は「圧倒的に検査数が多いのは東京」「冷房と暖房の両方をかけることにどう対応すればいいのか。整合性を取るのは国の問題だ」と反発し、責任の押し付け合いだ。
そして政府は7月22日からの「Go Toキャンペーン」を強行する構えである。国民不在、危機感ゼロの対応としか言いようがない。
最近の感染者急増局面の中で、気になるのは感染経路である。小池知事は「夜の街」「会食」「若い人のパーティー」を強調しているが、感染不明者がほぼ半数を占めていることの詳細については触れない。
市中感染の高まりという指摘があるが、その中で通勤電車やバスでの感染はどれだけあるのだろうか。これまで通勤電車でクラスターは発生していないというが、市中での感染実態はまったく不透明だ。
通勤電車関連の感染というと、NYの事例が象徴的だ。5月20日、NYの地下鉄やバスなどを経営するMTA(ニューヨーク都市圏交通公社)は、職員120人がコロナで死亡したと発表し衝撃を与えた。大半が現業部門の職員だ。NYの地下鉄は深夜1時から5時までの間、運行を止めて3000人で424の駅と6000両以上の車両の清掃・除菌を徹底しているが、利用客はかつての8割減だという。
一方、日本の通勤電車事情はどうか。国交省の「駅利用状況」の指数(2月25日の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」発表時を100としたデータ)を見ると、緊急事態宣言中は3割台から4割台前半だったのに、7月6、7日の指数は首都圏は72、関西圏は83の高水準まで戻ってしまった。
国交省はテレワークや時差出勤を呼びかけているが、テレワーク実施率は緊急事態宣言解除(5月25日)以降、数ポイント低下している。コロナ禍以前の通勤スタイル、満員電車が復活してきているのだ。