国際情報

香港「国家安全法」導入で思い知るトウ小平が残した難題

大前研一氏は香港をどう見る

 国家安全法が香港に導入され、国際社会はますます中国との付き合い方が難しくなっている。香港の混乱は単なる中国の横暴なのか、一国二制度を中国はどのように捉えているのか。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。

 * * *
 7月1日で香港返還から丸23年が経過した。

 それに先立ち、中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)は、香港に対し反政府活動を禁止する「国家安全維持法」を導入する方針を圧倒的多数で可決。6月末に同法は全人代常務委員会で制定され、香港立法会の審議を経ることなく施行された。だが、香港における言論・報道・出版の自由、集会やデモの自由、信教の自由などが制限される可能性があるため、民主派の市民は香港の「高度な自治」を保障した「一国二制度」と「港人治港」(「香港人が香港を治める」という意味)の崩壊だとして強く反発している。

 しかし、誤解を恐れずに言えば、中国政府にとって香港に対する国家安全維持法の制定は必然である。

 中国政府が国家安全維持法の導入を強行した背景には「香港基本法第23条」問題がある。周知の通り、香港は1984年の英中共同声明に基づいて1997年に中国に返還された。同声明は、中国は香港で社会主義の制度と政策を実施せず、外交と防衛を除いて香港に大幅な自治権を与え、資本主義制度と生活様式も50年間変えない、と定めた。それが一国二制度だ。

 この方針は1990年の全人代で採択された香港基本法に引き継がれたが、その一方で同法23条は「国家反逆、国家分裂、反乱扇動などの国家安全を脅かす行為と外国政治組織・団体の活動および関係樹立を禁止する法律を香港が自ら制定しなければならない」と規定している。しかし、それに対する香港市民の反対は根強く、いまだに実現していない。このままでは反政府行動を合法的に抑え込むことが難しいため、中国政府は国家安全維持法の導入に踏み切ったのである。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ロシアのプーチン大統領と面会した安倍昭恵夫人(時事通信/EPA=時事)
プーチンと面会で話題の安倍昭恵夫人 トー横キッズから「小池百合子」に間違われていた!
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問される佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《ブラジルへ公式訪問》佳子さま、ギリシャ訪問でもお召しになったコーラルピンクのスーツで出発 “お気に入り”はすっきり見せるフェミニンな一着
NEWSポストセブン
「日本人ポップスターとの子供がいる」との報道もあったイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
イーロン・マスク氏に「日本人ポップスターとの子供がいる」報道も相手が公表しない理由 “口止め料”として「巨額の養育費が支払われている」との情報も
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
《会社の暗部が暴露される…》フジテレビが恐れる処分された編成幹部B氏の“暴走” 「法廷での言葉」にも懸念
NEWSポストセブン
渡邊渚さんが性暴力問題について思いの丈を綴った(撮影/西條彰仁)
《渡邊渚さん独占手記》性暴力問題について思いの丈を綴る「被害者は永遠に救われることのない地獄を彷徨い続ける」
週刊ポスト
母・佳代さんと小室圭さん
《眞子さん出産》“一卵性母子”と呼ばれた小室圭さんの母・佳代さんが「初孫を抱く日」 知人は「ふたりは一定の距離を保って接している」
NEWSポストセブン
長嶋茂雄さんとの初対戦の思い出なども振り返る
江夏豊氏が語る長嶋茂雄さんへの思い 1975年オフに持ち上がった巨人へのトレード話に「“たられば”はないが、ミスターと同じチームで野球をやってみたかった」
週刊ポスト
元タクシー運転手の田中敏志容疑者が性的暴行などで逮捕された(右の写真はイメージです)
《泥酔女性客に睡眠薬飲ませ性的暴行か》警視庁逮捕の元タクシー運転手のドラレコに残っていた“明らかに不審な映像”、手口は「『気分が悪そうだね』と水と錠剤を飲ませた」
NEWSポストセブン
金田氏と長嶋氏
《追悼・長嶋茂雄さん》400勝投手・カネやんが明かしていた秘話「一緒に雀卓を囲んだが、あいつはルールを知らなかったんじゃないか…」「初対決は4連続三振じゃなくて5連続三振」
NEWSポストセブン
違法薬物を所持したとして不動産投資会社「レーサム」の創業者で元会長の田中剛容疑者と職業不詳・奥本美穂容疑者(32)が逮捕された(左・Instagramより)
《レーサム創業者が“薬物付け性パーティー”で逮捕》沈黙を破った奥本美穂容疑者が〈今世終了港区BBA〉〈留置所最高〉自虐ネタでインフルエンサー化
NEWSポストセブン
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
《女子バレー解説席に“ロンドン五輪メダル組”の台頭》日の丸を背負った元エース・大林素子に押し寄せる世代交代の波、6年前から「二拠点生活」の現在
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
「週刊ポスト」本日発売! ミスター長嶋茂雄は永久に!ほか
NEWSポストセブン