新型コロナウイルス感染防止のために“密”を避けなければならない今、自然災害時における感染症予防のあり方が改めて考え直されている。衛生環境が万全とはいえない避難所で、感染リスクにどう対処すべきなのだろうか。
◆密を防ぐ
いま、注目されているのが、密を防ぐ避難「分散避難」だ。
「避難の仕方は、地震、洪水、台風など災害の種類や規模、地形などの違いによって異なります。まずは事前に自治体発行のハザードマップを参考にして、それぞれの状況に合わせて避難ルートを確認。避難所や親戚・知人宅、ホテル、在宅避難、疎開避難、車中泊、テント避難など、さまざまな避難場所を想定しておくことが大切です」と、阪神・淡路大震災以降、全国で災害支援を展開してきた一般社団法人OPEN JAPAN理事の木村とーるさんは言う。
台風や豪雨など事前予測が可能な自然災害の場合は、あらかじめ広さに余裕がある避難所や分散避難可能なホテルなど新型コロナウイルスの感染リスクが低い場所を探して早めの避難を心がける。
自宅が安全な場合は在宅避難を。上階が冠水しない安全な場所なら、事前に電化製品などを上階に運び、1週間分の生活備蓄品を用意しておく。地震災害は予測がつかず突然やってくるので、非常用持ち出しグッズや避難用テントなどを準備する。
「テントは密を避けることができ、車中泊でのエコノミー症候群を回避できる格好の避難所。安全にテント泊や車中泊ができる場所を事前に探し、各家庭で備えておくとよいでしょう。また大地震が起きると食器やガラスなどが散乱し、素足で歩くと危険。けがも感染症リスクを高めるので、就寝場所の近くにルームシューズを準備しておくと安心です」(木村さん)
ウイルス感染に怯えて避難を躊躇することは危険。自治体から避難勧告が発表された場合は命を守るために速やかに避難をすることが大切だ。そのためにも日頃から災害に対応できる自己判断力を鍛えておきたい。
「自然の中で全天候型のキャンプをすると、過酷な気象状況の中での判断力が鍛えられます。家族で遊びながらテント泊の経験を積んで、防災を学んでみてはいかがでしょうか」(木村さん)
【教えてくれたのは…】
一般社団法人OPEN JAPAN理事・木村とーるさん/Wilderness Village四万十塾代表。阪神・淡路大震災でボランティア団体神戸元気村の立ち上げに従事。以後、一般社団法人OPEN JAPANの支援活動プロジェクトを全国で展開。環境学習塾・四万十塾ではカヌートレッキングガイドを務め、川旅を通して環境問題・永続可能なライフスタイルを提案。災害支援にも生かしている。著書に『四万十塾の焚き火料理塾』。
※女性セブン2020年7月30日・8月6日号