国内

「Go To トラベル」とアベノマスク どっちが愚策か考えてみた

旅に出たいのはやまやまだが(写真/時事通信社)

 コロナ禍は奇しくも、国の舵取りがいかに重要なものかを実感させる事態を幾度も引き起こしている。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 世の中、何が起きるかわかりません。コロナ禍も半年前には誰も想像していませんでしたが、コロナをめぐる政府の動きも常人の予想を大胆に打ち破ってくれています。みなさん忘れかけていますが、安倍首相が4月1日に「すべての住所に2枚ずつ布マスクを配布します」と言ったときは、その斜め横すぎる発想に多くの人が腰を抜かしました。

 あれを超える愚策は、生きているあいだにはもう出合えないだろうと思っていたら、どうやらそうでもなさそうです。16日のお昼現在、ちょっと微妙な風向きになってはいますが、少なくとも昨日まで、政府は「Go Toトラベル」キャンペーンを強引に実施する姿勢でした。あちこちの知事や市長が「やめてくれ」「考え直してくれ」と言っているのに。「感染拡大が収束したあとで実施する」と言っていたはずなのに。

 感染の拡大状況について菅官房長官や担当大臣は、苦しい表情で「も、問題ない」と主張しています。しかし、東京都は16日の新規感染者数が286人と発表し、一日あたりの新規感染者数の最高記録を更新しました(その後、東京は対象外とし、22日からキャンペーンはスタートすることに)。

 観光業界を救う必要があるという主張はよくわかるし、とても大事です。しかし、実施したらどうなるか。まず間違いなく、観光客に暴言を吐いたり石を投げるような対応をしたりする「トラベル警察」が出現し、あちこちでトラブルが起きるでしょう。

 さらに、もし「都会から来た観光客がコロナを持ち込んだ」という事例が出たら、その観光地が大きなダメージを受けるばかりか、全国的に「都会の人は来るな」という機運が今以上に高まります。そうなると「旅行に行ってもロクなことはない」というイメージが広がり、旅行離れが進んで観光業界は長期的に深刻なダメージを受けかねません。

「Go Toトラベル」キャンペーン自体はいいとして、なぜ今のタイミングなのか。このまま実施されたとしたら、アベノマスクを凌駕する「天下の愚策」になる可能性は大いにあります。その情けなさを深く胸に刻むために、愚策っぷりを比べる5番勝負を試みてみました。あくまで独断に基づいた判定です。広い心でご笑覧ください。

〈どっちが愚策でショー!? アベノマスクvs「Go Toトラベル」キャンペーン〉

●勝負その1 どっちが無駄遣いか?

 アベノマスクの予算は466億円とも90億円とも言われています。あとから検品費用も加わりました。「Go To」の予算は1.7兆円で、事務委託費が3000億円だとか。ただ、マスクの製造業者など一部の人だけが潤うアベノマスクと違って、「Go To」は全国の観光業者に恩恵をもたらします。金額のハンディをひっくり返して、この勝負、アベノマスクの勝ち。

●勝負その2 どっちがグレーか?

 アベノマスクも製造業者の選定や配布を担当する会社の決め方は、あやしさてんこ盛りでした。「Go To」もしかり。全国旅行業協会の会長を務めているのは自民党の二階俊博幹事長だし、事務委託費が噂の電通やパソナ方面に流れるとも言われています。龍虎の戦いではありますが、スケールの大きさや顔ぶれと手口のおなじみ感で「Go To」の勝ち。

関連記事

トピックス

中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える\"心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン
「岡田ゆい」の名義で活動していた女性
《成人向け動画配信で7800万円脱税》40歳女性被告は「夫と離婚してホテル暮らし」…それでも配信業をやめられない理由「事件後も月収600万円」
NEWSポストセブン
現在はニューヨークで生活を送る眞子さん
「サイズ選びにはちょっと違和感が…」小室眞子さん、渡米前後のファッションに大きな変化“ゆったりすぎるコート”を選んだ心変わり
NEWSポストセブン