相次いだ放映延期、コロナ禍の影響はドラマファンにとっても大きかったが、悪いことばかりではなかったはず。かつての作品が新たな波を生み出すこともある。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。
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コロナ禍によるドラマ撮影の中断で、過去作品の再放送が続いています。当初は苦渋の選択だったはずの再放送も、今や空いた時間を埋めるコンテンツではなくもっと積極的な意味あいや成果がはっきりと見えてきました。簡単にいえば、ドラマの魅力再発見ということでしょう。
例えば松嶋菜々子主演の『やまとなでしこ』(フジテレビ系 2000年)。20周年特別編の第一夜・第二夜合計視聴率は世帯平均視聴率10.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と上々の結果に。SNSでは「松嶋菜々子がすごくキレイ」「可愛らしい」という評価が溢れ、「神野桜子は松嶋菜々子の最高のハマり役」「華やかなファッションがいちいち決まっている」「セリフがとっても懐かしい」と反響が。
20年前の松嶋さんの、きらめくような「美しさ」。それはまさしく視聴者の誰もが感じたこと。ただそれ以外にも再放送によって改めて発見したことがありました。一言でいえば、松嶋菜々子という役者の持っている潜在的な力──演じる人物に対する深い理解力と、鋼のように強くてしなやかな意志です。
『やまとなでしこ』の桜子は、キャラクターの輪郭が非常にはっきりとしていました。「借金まみれのハンサム男と裕福なブタ男」なら「幸せにしてくれるのは裕福なブタ男」と選択軸が明快。「心よりお金!」「女が最高値で売れるのは27」と断言し、結婚をドタキャンした際は「私は悪くな〜い!」と叫ぶ。大胆な方向転換をする時も自分の行動のリスクを引き受ける根性と覚悟がある。そんなエッジの効いた個性的な人物を実に活き活きと浮かび上がらせました。
松嶋さんは「桜子」という役柄をしっかりとグリップ。この人物ならこうした行動をとる、こうしたしぐさをする、と一つ一つ確信を持って演じていた。だからブレがなく、シャープな演技でつい一挙手一投足に見とれてしまうのでした。
奇しくもその11年後、松嶋さんにめぐってきた久々の単独主演作こそ、『家政婦のミタ』(日本テレビ系2011年)でした。ご存じ、このドラマの最終話視聴率は40.0%(関東地区)とお化け数字をたたき出した。