コロナ危機を克服する鍵を握るのが、ワクチン開発と並んで治療法の確立である。世界最多の感染者を出したアメリカでは、ひとつの論争が起きている。トランプ大統領が「特効薬だ」と宣伝し、自らも予防のためと服用していたマラリア治療薬「ヒドロキシクロロキン(HCQ)」に効果はあるのか、ないのか。サイバーセキュリティの専門家で科学者でもあるLeo Goldstein氏は、トランプ大統領のロシア疑惑を調査したロバート・モラー特別検察官の報告書を子細に分析した著書などが話題になっている著名な作家である。そのGoldstein氏は、コロナ治療の背景には親トランプvs反トランプの政治的対立があり、科学的な評価ができていないと指摘する。
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コロナウイルス感染症の初期に、ヒドロキシクロロキン+抗生物質アジスロマイシン(HCQ+AZ)と、必要に応じて亜鉛を投与すると、顕著な効果が得られる。以下で述べるようにこれは事実であり、患者にとっても流行阻止に対しても有効な方法だ。
患者の多くが早期にHCQベースの治療を受け、5~7日間隔離されれば(ウイルス量が安全なレベルに低下するまで)、感染者数は指数関数的に低下し、流行は終わる。すでに感染が広がっていた時期にこの治療法を採用したイタリアやスペインなどでも、そうした事象は確認された。
しかし去る6月15日、FDA(アメリカ食品医薬品局)はHCQに対する緊急使用認可を取り消し、HCQ治療の有効性と安全性について疑いを広めるという、科学的に正しいとはいえない不誠実な発表をした。もともとこの緊急認可は、国家戦略備蓄のHCQの使用を病院のみに限定したが、ほとんどの患者は、この治療法を行うには遅すぎる進行した症状で入院している。つまり、HCQはこれまで、最悪の状態の入院患者に投与されてきたことになる。
政治的もしくは経済的な目的を持つ関係者たちは、そうした不適切な症例を取り上げて、HCQは役に立たない、あるいは有害でさえあると主張したのである。メディアが報じるほとんどすべてのHCQ研究は、入院患者を対象に行われたものだ。医学誌『ランセット』は、根拠となるデータのない論文を掲載して後に撤回したが、そうしたHCQを否定する意見はアメリカ国民の印象に残った。
実際には、逆に「Henry Ford Hospitals」の研究のように、HCQを入院患者に使用した場合でも死亡率は下がるとするものもある。
しかし、メディアや巨大IT企業は「トランプの薬」に反対するキャンペーンを張り、病院や多くの医師にHCQを処方しないようにプレッシャーをかけてきた。