コロナ禍で待たれる“特効薬”。その望みを託されているのが、米医薬大手ギリアド・サイエンシズが開発した「レムデシビル」だ。5月初めにアメリカが新型コロナ患者への緊急使用許可を出すと、直後に日本が特例承認し、7月に入ると欧州委員会が承認した。
そこで注目を集めたのはレムデシビルの販売価格だ。新型コロナを治療するには通常、レムデシビルを5日間で点滴として6本投与する必要がある。ギリアド社は米国と先進国向けの販売価格を、1本分を390ドル(約4万円)、1回の治療にかかる6本分の価格を2340ドルに設定した。日本円でおよそ25万円だ。
アメリカ政府はすでに9月末までのレムデシビル生産分のうち、92%を確保しているとの報道もある。気になるのは日本の状況だが、実はすでに国内に入ってきている。厚生労働省生活衛生局医薬品審査管理課の担当者が語る。
「現状でギリアド社からの善意の無償提供を受け、レムデシビルを新型コロナの治療薬として医療現場で活用しています」
人工呼吸器や集中治療室などを利用する重症者を対象に、厚労省が医療機関を通じてレムデシビルを提供している。新型コロナは指定感染症に定められているため治療は公費扱いとなり、患者は無償で利用できる。
ただし、ギリアド社の無償配布がいつまで続くかはわからない。いずれは日本でも薬価が決定されるとみられる。
「通常であれば、アメリカでの価格設定とは別に、日本で改めて公定価格が定められるプロセスとなります」(谷本医師)