『女性セブン』に連載されている漫画『トラとミケ』(ねこまき・作)の単行本第2巻がこのたび発売された。名古屋にあるどて屋『トラとミケ』を舞台に描かれるほっこりストーリーは、発売前から「楽しみすぎる」「昭和のあの感じが大好き」「心癒される」「カラーで読めるのがうれしい」など大きな反響を呼んでいる。そこで、『トラとミケ』ファンの酒場詩人・吉田類さんに、その魅力を聞いた。
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古い一軒家の暖簾が掛かった引き戸をガラガラーっと開けると、コの字のカウンターがあって、常連さんたちが丸椅子に座ってワイワイガヤガヤ賑やかに飲んでいる。『トラとミケ』で描かれている世界観は、いつもぼくが行っている昭和酒場そのもので、そのシチュエーションがまず、すごく気に入りました。それと、料理もちゃんと季節感が出ていますよね。そうそう、ブリ大根があるのってこういうお店だな、とか、栗ご飯や味噌串カツなんかもリアリティーがありますよね。
舞台は名古屋ですが、東京の下町にもこうした大衆酒場は残っています。トラとミケのような、どこかお母さんのような存在だったり、親戚のおばあちゃんのような懐の深い女将さんがいて、どんなお客さんが来ても、「あんた、ダメ」ということはなくて、普通に受け入れてくれる。
だから、つい相談や愚痴を言いたくなっちゃうし、みんなが弱さや優しさを持ち寄ってくるから、そこにドラマが起きる。この作品はしかも、ぼくの大好きな猫のキャラクターで描かれているから、余計にぬくもりが伝わってきましたし、非常に心が和みました。
『トラとミケ』の常連でお隣のシンちゃんの話だって、「お袋がこんなに早く死んだのはオヤジのせいだろ!」と言って息子が出て行って、13年間も断絶したままという、実はかなりシリアスな話じゃないですか。それでも最後、家族愛のあふれる酒場が間に入って、親と子の確執がハッピーエンドになる。そういうことって、物語のなかだけではなくて、現実にも実際、そんなふうに機能しているお店があるんですよ。