認知症の母(85才)を支えている『女性セブン』のN記者(56才・女性)が、介護の裏側を綴る。今回は、母の癒しとなるクッションについて。
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母と一緒に通う美容院では施術中、ひざにのせるホールドクッションを貸してくれる。雑誌を読むのに楽で手触りもよく、母はちょうどひざに抱いたペットを愛おしむようになでて離さない。意外な癒しになっているようだ。
長時間座って過ごすとき 楽チンなクッション
美容院ではよく使われるそうだが、「ホールドクッション」というのがある。
結構厚みのある三日月形で、イスに腰かけてひざの上にのせると、体を包むようにフィットして、ベッドテーブルのようになる。この上に手をのせると雑誌を読んだり、スマホを見たりするのにちょうどいい高さになるのだが、何より腕をのせるだけでとても楽なのだ。寝るときの足枕やひざクッションが足の重みを受け止めて、腰への負担を楽にしてくれるのと同じ原理だろう。
初めて足枕をしたときにも感動したのだが、普段立っても座っても横になっても体のどこかに力が入っているもので、それを支えてもらってフッと力が抜けたときのささやかな快感、安心感は何とも言えず絶妙だ。
母が初めて大きなクッションを差し出されたときには、「へぇ~、これ何? 枕?」と、頭をクッションに近づけたりして、若い美容師さんたちを笑わせた。ちなみにこういう“ボケ”は昔の母にはなかったことで、やはり認知症のせいなのか、はたまたどこでも愛想よくなじもうとする高齢賢者のギャグなのか、実は娘の私にも見分けがつかない。
「本当だわ、楽チンね~」
美容師さんたちに促されて手をクッションの上に投げ出すように置くと、その“ささやかな快感”をすぐに感じたようで、ご機嫌になった。
高齢になるとただでさえ筋力が衰えるから、座り姿勢を保っているだけでも疲れるらしい。母と私はいつもカットとカラーリングで2時間近く、そのほとんどを着席して過ごすので、ホールドクッションの効用は絶大なのだ。