「夢の新薬」の“落とし穴”が明らかになった。オプジーボやキイトルーダなど「免疫チェックポイント阻害薬」で治療中のがん患者が新型コロナに感染した場合、重症化するリスクが高まる──そんな論文が医学誌『ネイチャー・メディシン』に掲載されたのだ。
人間の体内に異物が侵入すると、免疫機能が働いてその異物を排除しようとする。対するがん細胞は免疫機能にブレーキをかけて、体内にがんを増殖させようとする。
「こうしたがん細胞の働きを阻止するのが免疫チェックポイント阻害薬です。ブレーキを解除された免疫機能が本来の力を取り戻し、がん細胞を攻撃する力が増すのです」(北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師)
この薬を使った免疫療法は、手術・化学療法(抗がん剤)・放射線に次ぐがん治療の「第4の柱」として注目されているが、今回の論文によれば、がん患者の中でも免疫チェックポイント阻害薬で治療中の患者だけ呼吸器合併症のリスクが増し、化学療法を行なっていたり、手術を受けたばかりの患者は重症化しなかった。同論文を読んだ石原医師が指摘する。
「新型コロナが重症化する際は、免疫機能が暴走し、感染した細胞だけでなく正常な細胞も傷つける“サイトカインストーム”が起こるとされます。免疫チェックポイント阻害薬を利用すると、この“サイトカインストーム”を後押しするメカニズムが働き、正常な細胞を傷つけることが重症化につながると考えられます。治療中のがん患者は特に注意が必要です」
※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号