新型コロナウイルスの感染拡大により、遅れに遅れていた米・大リーグが7月24日にようやく開幕だが、3密を避けるため日本のプロ野球開幕と同様、無観客試合で始まる。だが、プロの試合は観る人がいないと始まらない。ジャーナリストの西田宗千佳氏が、世界でも次々と導入されている自宅からスタジアムへ歓声を届ける「リモート応援」について解説する。
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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に伴う規制によって、興行関連事業は大きな制約を受けている。スポーツも例外ではない。「無観客試合」という言葉もすっかり定着した。日本のプロ野球・Jリーグは無観客試合を導入し、段階的に少数の観客を入れる方向へと進みつつあるが、7月23日に開催されるアメリカ・メジャーリーグ(MLB)は、無観客試合での開始となる。
無観客試合は味気ない。だがもちろん、各関係者は様々な技術を使って状況への対処を進めている。
メジャーリーグは「ゲーム」の音で無観客試合を盛り上げる
MLBは、日本と同じように「無観客試合」でスタートする。野球観戦の醍醐味は、スタジアムに響く歓声が生み出すにもあるので、寂しいことに違いはない。
そこでMLBでは、歓声を「バーチャルサウンドノイズ」として再現することになった。音のデータとして使うのは、MLBが「公式ゲーム」として協力している「MLB The Show」(発売元:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)で、ゲーム内の歓声として使われているデータ。その中から一般的な歓声からブーイングまでの75種類をピックアップし、ホームゲームを視聴中のファンがボタンを押して「反応」を球場に届けるようになっている。
自らのリーグの「公式ゲーム」の歓声音を無観客試合で使う、という検討は、他のメジャースポーツでも進んでいる。イングランド・プレミアリーグでは、テレビ中継の副音声として、プレミアリーグがライセンスを提供しているサッカーゲーム「FIFA 20」(発売元:エレクトロニック・アーツ)の音声が使われているし、全米プロバスケットボールリーグ(NBA)でも、公式ゲーム「NBA 2K」(発売元:テイクツー・インタラクティブ)の音声を利用する。
ゲームはテレビ越しに、球場にいる雰囲気を出すための工夫をずっと行ってきた。その知見やデータを使うのは、ある意味でわかりやすい方法だ。