「梅雨末期の大雨」の言葉通り、活発な梅雨前線が日本列島に記録的な豪雨と未曽有の被害をもたらした。熊本県を中心に九州を襲った「令和2年7月豪雨」と同レベルの雨が、今後東京都を襲う可能性もある。そのとき、街はどうなるのか――。
昨年の台風19号では、神奈川県の武蔵小杉駅周辺に壊滅的な被害をもたらした多摩川だが、実は危険エリアは同駅から広範囲にわたって広がっている。立命館大学大学院教授の高橋学さんはこう語る。
「武蔵小杉駅から約1.5kmのところにある『等々力緑地』は、かつて多摩川が流れていた旧河道なんです。そこから川沿いに約6㎞、二子新地駅付近までも旧河道エリアといえます。これまでは持ちこたえていた堤防も、熊本並みの豪雨となれば、一気に崩壊する危険性が否定できません」
より都心部に近い隅田川も、氾濫すれば甚大な浸水被害をもたらすことになる。元江戸川区土木部長で『水害列島』(文春新書)などの著書がある土屋信行さんが言う。
「隅田川は荒川や多摩川などとは違い、堤防が土ではなくコンクリートでできています。丈夫そうに聞こえますが、造られてからすでに60年近く経過しており、老朽化のために堤防のどこが壊れてもおかしくない状態です。しかも、その幅があまりにも薄いので“カミソリ堤防”などと呼ばれているほどペラペラなんです」
もし隅田川の堤防が決壊し、荒川や多摩川なども氾濫するとなれば、甚大な被害が出ることになる。土屋さんは、死者数が8万人を超える可能性もあると指摘する。
「神田川から流れ出た水は都心部にまで流れ込み、丸の内、銀座、大手町、日本橋といった日本経済の中心部を水没させます。荒川からあふれた濁流は家々をのみ込み、地下鉄に流れ込んだ水はトンネルの中を猛スピードで進み、銀座や二重橋あたりのマンホールなどから水が噴き出す。ライフラインは完全に麻痺してしまうことも予想され、犠牲者8万人という想定も決して大げさな数字ではありません」(土屋さん)
本誌・女性セブンに掲載したこのマップは、荒川と多摩川が氾濫した場合に浸水する地域を、国土交通省がシミュレーションしたもの。しかし、この想定をはるかに超えることを見越した備えが必要になっている。
※女性セブン2020年7月30日・8月6日号