本来、すべての国民に権利や財産の平等を与えるはずだった共産主義は、多くの国でそれとは真逆の社会を生み出している。共産主義の成功例とされる中国やキューバも例外ではない。政治学や国際経済についての著作が注目を集める新進のライターErnesto J. Antunez氏が、「共産主義の楽園」と見られることも多いキューバの実態をリポートする。
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共産革命によって成立したキューバでは、平等主義の多くはすでに消え去っている。カストロ一族にとどまらない「新階級」が社会のあらゆる指導的地位を占め、付随する特権(権力、金、地位、名声など)を独占的に享受することになった。
1959年に革命を成し遂げたフィデル・カストロは、病気により2006年に弟のラウル・カストロに権力を譲ることを余儀なくされるまで、長い間この体制の頂点に一人で座っていた。その頂点のすぐ下に、2つのグループ、すなわち「ノーメンクラトゥーラ(共産貴族)」のエリートと、その執行機関としての高位の軍将校が座っている。キューバ軍は一時、直接的もしくは間接的に経済の60%以上を握り、党エリートに匹敵する力を持つことに成功したが、「革命の英雄」アルナルド・オチョア将軍が1989年に粛清されて以来、軍は完全に党の管理下に置かれることとなった。
その下に位置する「中間層の上層部」には2種類の異なる者たちが生息している。第1は、貧しい国営商店の経営者が、貴重な食料品や物資を大量に闇市場にばらまいて裕福に暮らしているケースである(売りさばくほかに家族や友人のために個人的に蓄えられていることは言うまでもない)。第2のタイプは、キューバ共産党の「つるつるすべる柱」を少しでも高くまで昇ろうと格闘する政治局員たちである。停電が多く、エアコンは手の届かないぜいたく品と考えられている湿度の高い亜熱帯の国で、エアコンの効いた広々としたオフィスで行われる比較的快適な戦いだ。
そして、中間層の下部には数えきれないほどの警察官や下級官僚らがいて、彼らは自分たちの収入を増やすために、秘密の私企業を運営するという反革命的な連中から賄賂を受け取り、あるいはあからさまに恐喝している。