日本でも新型コロナ接触確認アプリの運用が始まったが、普及率は低いままだ。そんななか、新型コロナ対策が進む中国では、次世代技術を使った新たな対策システムが次々と誕生している。『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)の著者で、経済ジャーナリストの浦上早苗氏がレポートする。
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AIやビッグデータと並び世界的に注目される次世代技術に「ブロックチェーン」がある。ブロックチェーンは仮想通貨「ビットコイン」の基幹技術として開発された、ネットワーク内で取引記録を共有し管理する技術だ。管理者がおらず、データの改ざんが事実上不可能な特性を生かし、近年は文書管理や、農産品・高級ブランドのトレーサビリティー(追跡可能性)などに応用が広がりつつある。
とはいえ、ブロックチェーンはインターネット以来の革命とも評されながら、仮想通貨以外では広く採用されるに至っていない。だが、中国で新型コロナが拡大すると、感染防止対策の一環として多様な社会実装の機会が生まれた。
調査会社互鍵脈搏研究院(IPRI)によると、2020年2月はブロックチェーンの実装プロジェクトが世界で42件発表されたが、そのうち中国が37件を占め、26件が新型コロナ対策関連だった。ちなみに、プロジェクトの発表数が2番目に多い国は日本で2件だった。
広州市南沙区は2月2日、同技術を活用して新型コロナの必要情報を取得・閲覧できるシステムをリリースした。地元メディアの報道によると、大学の研究所やIT企業、地元政府の約20人が春節休暇中の1月29日からテレワークでシステムを構築したという。各部門が保有する膨大なデータを自動で整理し、「追跡必要者の状況」「感染拡大が深刻なエリアからの人の出入り」「交通・宿泊施設、感染者多発地点などの情報」「ニュース速報」を1つのプラットフォームで確認できるようにした。
山東財経大学(山東省)ブロックチェーン金融重点ラボは2月7日、教職員や学生の行動情報を管理する「ブロックチェーン新型コロナウイルス情報観測システム」の運用を開始。山東省立病院から新型コロナのデータの提供を受け、学生と教職員の健康状況を示すデータ、外出データ、予防や発見につながる情報を共有できるようにした。