観客を定員の4分の1(2500人)に制限して開催されている大相撲7月場所。無観客開催だった3月場所では、相撲協会は新型コロナ感染者が1人でも出たら本場所を中止する意向を示していたが、7月場所では感染者が出ても場所を途中で打ち切らない方針だ。初日(7月19日)のNHK大相撲中継に尾車事業部長(元大関・琴風)が出演し、「感染症の専門家のアドバイスに基づき、万が一、感染者が出たとしても中止にしない。中止した場合はその協会員、家族への精神的負担が大きくなるため、打ち切りはしない」と明言している。
尾車事業部長は「感染者が出た場合でも、支度部屋でマスクをしていることで濃厚接触者とならないとアドバイスを受けている。準備運動でもマスクをつけるように指示をしていますが、協会員のマスク着用が重要だと思っています」と話し、感染予防のために最善を尽くすとしていた。
たしかに、NHK大相撲中継に映る場面では“密”を避けようとする様子が見て取れる。たとえば、物言いがつくと土俵上に審判の親方衆が集まって協議が行なわれるが、今場所はソーシャルディスタンスを確保するために、通常より距離を取って話し合っている。その結果、通常よりも“大きな声”での協議となり、2日目の千代大龍対玉鷲戦では、土俵上で話し合う審判の声が、土俵下で結論を待つ力士に聞こえてしまうというハプニングもあった。
ただ、国技館2階椅子席から観戦すると、テレビに映らないところで“密”が生じているような場面も見て取れた。たとえば審判の親方衆が出番を待つ西花道の奥では、マスクをしない状態で5人が集まって談笑していた。その横にはマスクをしていない呼び出しが立っており、さらにその奥には次の出番の関取が準備運動している。横にはマスクをした付け人。花道の奥だから、中継ではほとんど映らない。
「土俵周りでは、審判や控えの力士たちが座っている。比較的距離を取るように注意はしているが、結びの一番の前になると、向正面は審判2人と控えの行司に加え、弓取の力士が座る。全員マスクはしていないし、なかなか距離を取るのは難しい。
また、仕切りの所作でも感染予防がどこまで徹底できているのか。水で口の中を清める『力水』を、素振りだけにするなどの対策はなされているが、たとえば時間いっぱいのタイミングで呼び出しから力士に手渡されるタオル。力士はこれで顔や体の汗を拭きます。このタオルは、幕内では座布団を運んでくる付け人が呼び出しに渡しますが、力士が汗を拭いたあとのタオルは力水用の水桶の取手部分に乗せている。次から次に力士の使用済タオルが置かれて、その水桶を呼び出しが運んだりするわけですから、大丈夫なのか気になってしまう」(若手親方)