“手がかかる、育てにくい子供”の特徴には、どんなことがあるのだろう? 年に延べ1万7000人ほどの子供を診察している『松永クリニック小児科・小児外科』の院長、松永正訓さんがこう話す。
「親子の間でコミュニケーションが取りづらいという点があげられます。例えば、手をつないで一緒に歩こうとしないとか、自分の思ったことが通らないと激しくかんしゃくを起こすなど、親の気持ちに思うように応えてくれない。発達障害とまでは診断されなくても、コミュニケーションの不得手、こだわりの強い子は近年、多くなっていると思います」
さらに松永さんは、こうした問題行動を叱って正そうとするのは大きな間違いだとも言う。
「感情的になってけなしたり、叱りつけても子供は成長しません。日本人は『○○しちゃダメ!』という否定的な言葉をよく使いますが、これも意味がない。『~してくれるかな』と、子供を尊重した伝え方をすれば、驚くほど親子関係は変わります」
そこで、子供の困った行動にどう対処すればいいのか。具体例に対して、松永さんが対処法をアドバイスする。
【教えてくれたのは…】
◆『松永クリニック小児科・小児外科』院長・松永正訓さん/千葉大学医学部附属病院に19年間勤務した後、クリニックを開院。日本小児外科学会・会長特別表彰など受賞歴多数。 2013年、『運命の子 トリソミー 短命という定めの男の子を授かった家族の物語』で第20回小学館ノンフィクション大賞を受賞。
●まずは3つの行動に分類する。
【1】好ましい行動か?
【2】好ましくない行動か?
【3】絶対やめさせたい行動か?
親は子供の行動を上記の3つに分類して対応を。【1】の場合はほめることが原則。笑顔で肯定的な言葉をかけることを忘れずに。
Q:保育園でお友達とうまくコミュニケーションが取れず、けんかをしてすぐに暴力をふるってしまうのをやめさせるにはどうすればいいですか? (30才・子は4才男児)
【松永さんのアドバイス】
友達に暴力をふるったり、道路に飛び出して車にはねられそうになる。これらは命の危険にかかわる問題ですから、子供の行動でいうと当然、【3】に分類されます。こうした危険に直面した場合は叱らざるを得ないと判断してもいいと思います。思わず大きな声で怒鳴りつけてしまうこともあるでしょう。
ただ、その後で「友達を叩いたら、友達がけがをするよ。いちばんやってはいけないルールだよ」と教え、諭してください。
トラブルを回避するのにおすすめするのが、先手を打つということです。順番を守れない、友達におもちゃを譲れず、仲よく遊べないのであれば、登園前に「列にはちゃんと並ぼうね」「おもちゃをみんなで順番に使おうね」と、あらかじめ話しておく。こうした声かけによって友達とのコミュニケーションがうまく取れるようになれば、子供は自分を肯定し、自尊感情を育んでいけます。失敗を未然に防ぎ、成功体験を重ねさせて。
※女性セブン2020年8月13日号