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【井上章一氏書評】日本におけるハラール食への関心は観光から

『日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く』小村明子・著

【書評】『日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く』/小村明子・著/朝日選書
【評者】井上章一(国際日本文化研究センター所長)

 ハラールとよばれる食べ物がある。ムスリムの食習慣になじむとされた食材や料理を、そう名づけている。ほんらいは、「許容される」というほどの意味合いになる。非ムスリム圏の日本では、食事に特化してこの言葉をつかっている。ムスリムにも「許容される」食べ物という意味合いで。

 反対の「禁止される」ことはハラームと言われる。これが英語のハーレム(harem)になった。日本語も、こちらをうけいれている。もっぱら、おおぜいの女性をかこった後宮という含みで、つかわれてきた。「許容」は食い物で「禁止」は女。日本のアラビア語受容は、なかなかあじわいぶかい。

 日本でハラール食がとりざたされだしたのは、二〇一〇年代からである。いわゆるインバウンド対策として、注目されるようになった。インドネシアやマレーシアなどから、おおぜいのムスリムが日本へやってくる。そんな観光客に、安心して食事をたのしんでもらおうという配慮のたまものではあった。現政権の観光立国という方針によっても、関心はあおられていただろう。

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