日本最大の暴力団の分裂劇から5年、「3つの山口組」が並び立つ構図が崩れようとしている。泥沼化する抗争はヤクザ社会、そして一般社会にどんな影響をもたらすのか。暴力団取材のツートップ、溝口敦氏(ノンフィクション作家)と鈴木智彦氏(フリーライター)が語り合った。
溝口:そもそも一般人が暴力団を必要としなくなったという問題がある。以前なら「あの人がカネを返してくれない、親分さん悪いけど代わりに取り立ててくれませんか」とか、「親分さんあそこの大学の理事長と親しいでしょう、うちのせがれを入れてください」とか、まさに街の世話役としての役割を担っていた。今それを担っているのは、弁護士でしょう。「過払い金の返還は任せてください」みたいな。
鈴木:力の力はなくならないにしても、法律のほうが強くなっている。
溝口:暴力にしたって、昔はヤクザが用心棒をしていたのが、今はガードマン会社でしょう。そこに天下っているのが、警察OBです。警察OBはヤクザの代わりをしている。
鈴木:一方で現役の警察はと言うと、山口組抗争のおかげでこれまで存続の危機にあったマル暴の存在価値が上がった。だから、今みたいに山口組が緩やかに抗争を続けながら衰退していくという活かさず殺さずの状態が、警察全体にとって一番いいわけですね。
溝口:山口組抗争の勝者は警察ということか。