認知症の母(85才)を支える立場の『女性セブン』N記者(56才・女性)が、介護の日々を綴る。今回は、母との外出時のエピソードを紹介する。
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緊急事態宣言解除後も高齢者施設の外出自粛は頑強だ。仕方がないが、母の認知症はグンと進み、外の刺激がいかに大事かを思い知った。そんな私と母に活を入れたのは、雨上がりの道で身をよじらせるミミズだった。
外出は認知症の特効薬かもしれない
母はアルツハイマー型認知症だが、朗らかに暮らしている。もちろん記憶障害はあるが、できないところはヘルパーさんが手伝ってくれるし、若い頃のやや気難しいところが和らいで、認知症もそう悪くない気さえしている。
しかし、初めからそうだったわけではない。7年前の診断当初は母自身が大混乱。妄想と暴言にまみれ、身なりも別人のようになってしまった。
頭を抱えた私が、暗闇の中で見つけた光明が“外出”だ。ゴミ屋敷化した家で母娘が向き合うと罵声と物も飛び交う地獄なのに、ふたりで一歩外に出ると、母はまた別人に、いや元の母に戻ったのだ。
すれ違う子供たちに明るく声をかけ、道端の花がきれいだと感動し、街に出るとレストランの看板を見て「何か食べよう」と誘ってきた。
正直、その豹変ぶりにも大いに戸惑ったが、病気の殻の中に母がちゃんと生きているようにも思えた。きっと外に出ると、思わず本当の母が顔を出すのではないかと…。
以来、母を外に連れ出すことが私の任務と心得ている。通院、散歩と目的は何であれ、とにかく家の外に出ること。一緒に歩くと私も心が晴れ、外気の効用を実感するのだ。