「子供に社会のマナーや最低限のルールを身につけてもらいたい」。どんな親でもそう思っているだろう。しかし、だからといって、頭ごなしにガミガミ言っても、子供の心には響かない。もちろん、しつけや暴言、体罰は厳禁。ポイントを押さえた教えが、いちばん効果的だ。
「こんなこともできないの? 恥ずかしいわ」「○○ちゃんは言うことがきけるのに」
『松永クリニック小児科・小児外科』院長・松永正訓さんは、こうした言葉で子供を叱ることに注意を促す。
「日本人は欧米人に比べ、恥への感覚が強いところがありますから、世間体を意識しすぎてしまうのかもしれません。しかし、教育というのは教えであって、子供に恥をかかせる言葉で叱ることではありません。しつけと称して怒ったり、子供に恥をかかせるような言葉を浴びせれば、子供は自尊心が傷つけられ、心の中で反発心も生まれます」(松永さん・以下同)
松永さんによればオーストラリアでは子供に「NO」と言わない子育てが主流だという。
「子供の言動を否定的に捉えずに“そういう考えもあるんだな”と、耳を傾ける。“○○であるべき”という固定観念がないんです。一方で“こうしてくれると助かるよ”という声かけをすると、子供も積極的に協力してくれるようになります」
「ごめんなさい」で何でも許さない
よいことと悪いことの区分けは難しいケースもしばしば。
「例えば、親に向かって物を投げつけて、その後で『ごめんなさい』と謝ってきたとします。これは物を投げつけるという好ましくない行動と、ごめんなさいと謝れる好ましい行動が交ざった状態です。こういうときに親が『ちゃんと謝れて偉いね』と許してしまうと、物を投げつけた好ましくない行動が帳消しになってしまいます。子供は謝ることでチャラにしようとしているので、そこは断固、許さずにスルーを。子供になぜ『ごめんなさい』が受け入れられないのかをよく考えさせ、反省させる必要があります」