ライフ

冷やし中華発祥の店は神田か仙台か 夏の国民食誕生の謎

「揚子江菜館」の五色涼拌麺(りゃんぱんめん) 1540円

 昭和初期に生まれた冷やし中華。その発祥の地には、東京・神田神保町の「揚子江菜館」説と、宮城・仙台の「龍亭」説がある。冷やし中華の原型はいかにして誕生したのだろうか。

 昭和8(1933)年、蕎麦好きの揚子江菜館・2代目が神田「神田まつや」でざる蕎麦を食べていた時に、「自分の店でも、冷やした麺を出したい」と考えた。200回以上の試行錯誤の末、甘酢ダレがようやく完成。盛り付けは、店の窓から富士山の雄姿が見えた瞬間に閃いたという“富士山盛り”。

 麺を高く盛り、側面に多彩な具材を並べ、四季を表現。具のサイズは大好きなタバコにインスパイアされ、ショートホープの長さ、マッチ棒の太さに決まった。こうして誕生した冷やし中華が「五色涼拌麺(りゃんぱんめん)」だ。常温(15℃前後)で提供され、具は10種類。食べた瞬間は甘味を強く感じるが食べ進めるにつれ爽やかな酸味が口に広がる。

 一方、昭和12(1937)年、仙台の龍亭の創業者が地元の中華料理店の夏場の売り上げ低下を阻止するために考案したのが「涼拌麺」。中華そばが1杯10銭の時代に、25銭と高価なメニューだった。現在、店で提供される「涼拌麺」の上にはエビとレタスが盛られ、別皿でクラゲ、蒸し鶏、ロースハム、キュウリ、チャーシュー、錦糸卵が添えられる。

「中国料理 龍亭」の涼拌麺 1375円

 冷やし中華の元祖と呼ばれるのは、冷やし中華の王道ともいえる独特の甘酢ダレを生み出し、それが全国へと広まったことが理由とされる。当初は、酸っぱさに驚いた客から「こんなもの食えるかっ!」と突き返されたこともあったが、改良を重ねて冷やし中華の味を確立し、次第に人気が高まっていったそうだ。

 ちなみに冷やし中華の正式名称は、この2大元祖店でも使われている「涼拌麺」。「拌」は中国語で「和える」を意味する。龍亭によると、「冷やし中華」の名付け親は、「お客様」だったという。

■揚子江菜館 東京都千代田区神田神保町1-11-3
営業時間:11時半~22時
定休日:無

■龍亭 宮城県仙台市青葉区錦町1-2-10
営業時間:月・火:11時半~14時半/木・金・土・日:11時半~14時半、17時半~20時半
定休日:水

※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号

関連記事

トピックス

大谷翔平(左)異次元の活躍を支える妻・真美子さん(時事通信フォト)
《第一子出産直前にはゆったり服で》大谷翔平の妻・真美子さんの“最強妻”伝説 料理はプロ級で優しくて誠実な“愛されキャラ”
週刊ポスト
「すき家」のCMキャラクターを長年務める石原さとみ(右/時事通信フォト)
「すき家」ネズミ混入騒動前に石原さとみ出演CMに“異変” 広報担当が明かした“削除の理由”とは 新作CM「ナポリタン牛丼」で“復活”も
NEWSポストセブン
万博で活躍する藤原紀香(時事通信フォト)
《藤原紀香、着物姿で万博お出迎え》「シーンに合わせて着こなし変える」和装のこだわり、愛之助と迎えた晴れ舞台
NEWSポストセブン
ドラマ『あなたを奪ったその日から』主演の北川景子(時事通信フォト)
《北川景子主演》“子どもの誘拐”がテーマの『あなたを奪ったその日から』は共感を呼べるのか? 名作『八日目の蝉』『Mother』との違いとヒットへの勝算
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが『あんぱん』にどハマり(HPより)
朝ドラ『あんぱん』は随所においしい“餡”が詰まっている! 河合優実、原菜乃華、志田彩良、市川知宏…出演者たちにもドラマあり
女性セブン
川崎
“トリプルボギー不倫”川崎春花が復帰で「頑張れ!」と声援も そのウラで下部ツアー挑戦中の「妻」に異変
NEWSポストセブン
最後まで復活を信じていた
《海外メディアでも物議》八代亜紀さん“プライベート写真”付きCD発売がファンの多いブラジルで報道…レコード会社社長は「もう取材は受けられない」
NEWSポストセブン
28歳で夜の世界に飛び込んだ西山さん
【インタビュー】世界でバズった六本木のコール芸「西山ダディダディ」誕生秘話、“夢がない”脱サラ社員が「軽い気持ち」で始めたバーダンスが人生一変
NEWSポストセブン
不倫報道のあった永野芽郁
《“イケメン俳優が集まるバー”目撃談》田中圭と永野芽郁が酒席で見せた“2人の信頼関係”「酔った2人がじゃれ合いながらバーの玄関を開けて」
NEWSポストセブン
六代目体制は20年を迎え、七代目への関心も高まる。写真は「山口組新報」最新号に掲載された司忍組長
山口組がナンバー2の「若頭」を電撃交代で「七代目体制」に波乱 司忍組長から続く「弘道会出身者が枢要ポスト占める状況」への不満にどう対応するか
NEWSポストセブン
日本館で来場者を迎えるイベントに出席した藤原紀香(時事通信フォト)
《雅子さまを迎えたコンサバなパンツ姿》藤原紀香の万博ファッションは「正統派で完璧すぎる」「あっぱれ。そのまま突き抜けて」とファッションディレクター解説
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! ゴールデンウィーク大増ページ合併号
「週刊ポスト」本日発売! ゴールデンウィーク大増ページ合併号
NEWSポストセブン