緊急事態宣言があけて安堵したのもつかの間、首都圏や大阪・愛知などを中心に再び新型コロナウイルス感染症が拡大している。
家庭内感染による重症者の激増、首都圏封鎖、新たなエピセンターの出現、陽性者の失踪…そんな負の連鎖を断ち切る“救世主”とされるのが、全世界で急ピッチに進められる「ワクチン」の開発だ。
「人々が予防接種を受けるのは、現実的には来年の前半となるでしょう」
7月下旬、WHO(世界保健機関)エグゼクティブディレクターのマイク・ライアン氏はこんな見通しを示した。
だが、まだ楽観はできない。一度新型コロナに感染して体内に「抗体」ができると、再感染しない、もしくは感染しても重症化しないとされてきた。しかし、その抗体が短期間しか持続しないことが、7月中旬、英ロンドン大学などの研究で報告されたのだ。 国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはこう付け加える。
「確実なことは言えませんが、ワクチンの効果も抗体と同じく、すぐ消えてしまう可能性があります」
ロンドン大の研究では、抗体の量は発症から約3週間でピークになり、その後減少。発症から約3か月後には元通りまで減り、症状の軽かった人で減りやすかったという。
中国・重慶医科大学などの研究チームも6月中旬に抗体に関する論文を発表。退院から2か月後には、症状があった人の13%、無症状の人の40%で抗体が消えていたという。
「ワクチンとは、毒性をなくした、もしくは弱められた病原体を体内に注入することで抗体など免疫をつける医薬品のことです。つまり、ワクチン接種による抗体も研究結果同様、短期間で消えてしまうかもしれません。そうなると、個人差はあるにせよ、1~2か月のスパンでワクチンを打つ必要があるかもしれない。ただし、抗体が弱ければワクチンを複数回打つことで、免疫機能が強化される『ブースター効果』を期待することはできる」(一石さん)
ワクチンを打つには費用がかかる。月に1回も打てば、いったいいくらかかるのか。
「米政府は製薬会社と1人あたり2回分のワクチンの価格を約4200円で契約しました。ワクチン接種は原則として保険がきかないので、年12回打つとすれば年間2万5000円ぐらいかかる計算です」(医療ジャーナリスト)
そもそも月に1回打てるワクチン量が供給されるのか。
「世界の人口をまかなうほどは不可能でしょう。現在、アメリカと中国が激しくワクチンの覇権争いをしていて、次々に“購入予約”をしています。日本国内でもワクチン開発は進んでいますが、このままでは海外製ワクチンを国内に供給するのは難しいかもしれません。国内でも争奪戦が起きるかもしれない」(前出・医療ジャーナリスト)
“救世主”が越えるべきハードルはかなり高そうだ。
※女性セブン2020年8月13日号