アメリカ大統領選挙は、直近のデータでバイデン氏がリードを広げている。が、それでも絶対優勢と言えない理由は、バイデン氏の高齢・健康問題に加え、「民主党候補になれた経緯」にもあるという。ニューヨーク在住46年のジャーナリスト・佐藤則男氏が指摘する。
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アメリカの大統領選挙で筆者が注目するのは激戦区の状況である。これらの激戦区は、本選で投票権を持つ代議員数も多く、選挙戦が激しくなるため、開票の際も決着が遅れることがよくある。それだけ大統領選挙にものを言う選挙区なのである。2000年、ブッシュ(子)とゴアが争った大統領選挙では、フロリダが最後まで接戦となり、投票翌日になっても勝負が決まらず、最後は最高裁が裁定するという大変な混乱に陥ったことは、日本の読者も記憶しておられるのではないだろうか。
さて、今回のトランプ氏とバイデン氏の戦いはどうか。カギを握る6州の現状について、各種世論調査を分析して独自の「平均値」を発表しているReal Clear Politicsの最新リポートでは次のようになっている(メディアの世論調査は、リベラル系ではバイデン氏、保守系ではトランプ氏に有利な数字が出てしまうため、あまり信頼はできない。同リポートは、そうしたバイアスを排除した数値を独自に算出しているため、筆者はこれが一番信頼できるデータだと判断している)。
ウイスコンシン州:バイデン氏5.0ポイントリード
ミシガン州:バイデン氏7.8ポイントリード
ペンシルバニア州:バイデン氏6.0ポイントリード
ノースカロライナ:バイデン氏4.7ポイントリード
フロリダ:バイデン氏6.2ポイントリード
アリゾナ:バイデン氏3.7ポイントリード
先週よりもバイデン氏が有利な状況になっている。筆者は46年間、アメリカで大統領選挙を見てきたが、通常の選挙なら、この時点でバイデン氏の楽勝が予想される。「バイデン氏の勝利は濃厚」とタイトルをつけてもいいところだが、今回の選挙はそうはいかない。その最大の理由はコロナ問題である。国民生活への影響や死者数を考えれば、第二次大戦より影響は大きいと言ってもいいかもしれない。これまでの経緯でトランプ氏の対処能力はほぼ明らかになっているが、バイデン氏のほうは全く未知数である。テレビ討論などで、同氏がどのような政策を打ち出し、トランプ氏がどう反論するか、それを見ないと選挙の行方を予測することは難しいと思う。