唯一の公共放送であるNHKには、民放とは違う独特のルールが存在するという。NHKで女性初のアナウンス室長を務め、「ナレーションの山根」と呼ばれた山根基世さん(1971年入局)と、大学時代に観た山根が司会の番組『土曜・美の朝』をきっかけにアナウンサーを志した内藤裕子さん(1999年入局)は現在ともにフリーの身だが、先輩・後輩の垣根を超え、NHK独特の“ルール”を語り合った。
山根:アナウンス室は昔、お呼びを待つ“芸者の置屋”なんて言われて悔しい思いもしましたが、それが放送人としての自覚を促してくれるバネにもなりましたね。
内藤:山根さんはフリーになって一番驚いたことは何ですか?
山根:打ち合わせやリハーサルが少ないことかしらね。
内藤:私も驚きました! 『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)のナレーションでも、スタジオ入りしたら即収録。ディレクターから「Nスペみたいに綺麗に読まないでください」と言われて戸惑いました。
山根:NHKは女性も地方局勤務があるし、異動も多いから厭がる人もいるけど、地方を体験しなければ身につかない力もあるわ。
内藤:はい。初任地の熊本放送局に赴任してすぐ、大雨の災害情報中継を担当しました。現場で取材して、その場で視聴者に役立つ情報を伝えることを叩き込まれました。