「退院して2か月ほど経ちますが急に37℃前後の微熱が出たり、頭痛が続く毎日です。とても全快とは言えません」
そう打ち明けるのは、都内在住の20代女性Aさんだ。
国の緊急事態宣言が解除された後、新型コロナウイルスの陽性が確認された彼女は、入院中に下痢や頭痛が生じ、味覚や嗅覚も失った。幸い、重症化せず2週間で退院できたが、想像以上に長引いているのが「後遺症」だ。
「味覚は戻ったんですが、逆に過敏症状に悩まされています。塩味や辛味、濃い味に敏感になりました。ようやく社会復帰できたのに、いつまでこの後遺症が続くのかと絶望する毎日です」(Aさん)
新型コロナ感染の再拡大とともに、Aさんのような人たちが急増している。
◆後遺症の組み合わせは多岐にわたる
7月に米国の医学誌「JAMA」に掲載されたイタリア・ジェメッリ大学病院などの研究では、退院患者143人を追跡調査した。その結果、回復から平均2か月の段階で、87.4%の患者に後遺症があった。最も多い症状は疲労(53.1%)で、呼吸困難(43.4%)、関節痛(27.3%)が続き、3つ以上の後遺症が残った回復者が過半数を超えた。
新型コロナはまず肺炎が心配されるが、調査結果が示すのは単なる呼吸器系の疾患ではなく、全身に影響が出ることだ。実際にその調査では、回復者の4割以上がQOL(生活の質)の低下を訴えた。
具体的にどのような後遺症に苦しめられるのか──。
都内在住で千葉の工場に勤務する20代男性Bさんは高熱や空咳が続き、PCR検査を受けると陽性。4月に都内病院に2週間入院した。
「その間に体重が5kg減少しました。退院後は歩くだけでしんどく、ご飯を作ろうとフライパンを持つだけでグッタリした。外出はもちろん洗濯物を干すことが難しくなり、ひとり暮らしが維持できず、近くに住む親に食事の支度を頼んでいました」(Bさん)
体力には自信があったBさんは、あまりに何もできなくなったのがショックだった。
「体を動かすことが好きでボルダリングが趣味でしたが、退院後は少しでも動くと疲れて座り込んでいました。筋トレができる状態でもなく、マンションの階段を使って体力の回復をめざしたけど、最初はほとんど上れませんでした。退院から4か月ほど経ったいまは、ようやく倦怠感が薄れてきています」(Bさん)
都内在住で、保険会社勤務の40代女性Cさんも4月に2週間入院。その間、4㎏やせたという。そのCさんがいまも悩まされるのは、「味とにおいの喪失」だ。
「退院から4か月近く経ちますが、まだ味覚と嗅覚が戻りません。食事の味付けが濃くなって塩分を摂りすぎることに注意していますが、本当に味覚と嗅覚が戻るのか、不安でなりません」(Cさん)
5月に入退院した埼玉県在住の40代主婦Dさんは、退院してから3か月経った現在、あることに悩んでいる。
「急に抜け毛が目立つようになりました。シャワーで髪を洗うと大量の髪の毛が手について、毎回、ギョッとします。海外の記事で新型コロナの後遺症で抜け毛に悩まされる人が急増していることを知って、“自分もそうなのか”と恐ろしくなりました」(Dさん)
6月中旬に都内病院に3週間入院した40代女性Eさんは、複数の後遺症に悩まされている。
「動悸で朝目覚め、微熱と頭痛は発症時からずっと続いています。脱水症状もなくならず30分に一度は水分補給が必要で、少し食べると胃もたれがひどく胃腸痛や下痢、胃のムカつきが続きます。発症前は1日にワイン1本飲んでいましたが、いまは缶酎ハイ1本でアルコールが回り、手に湿疹が出るようになりました。鼻から抜ける香りが失われたままで、柚子やレモン、わさびの香りがしません。料理関係の仕事なので、後遺症が仕事に支障をきたしています」(Eさん)
4月に入院したモデルの逢沢しずか(年齢非公表)も7月24日、ツイッターに、
《後遺症かなり落ち着いたけど味覚は未だに完全に戻ってないし消化器官不良、超不眠症で薬飲んでるよ。生理も三ヶ月止まって最近やっときたの》
と苦しい胸の内を投稿している。
漢方内科と耳鼻科感染症が専門で、新中野耳鼻咽喉科クリニック院長の陣内賢さんは「後遺症の組み合わせは多岐にわたる」と指摘する。
「微熱、倦怠感、体の痛さ、息苦しさ、食欲不振などさまざまな症状が組み合わさり、4か月半も後遺症と思われる症状が続くケースもあります。症状が重なり、退院しても職場に復帰できず退職する人もいる。若い人では新型コロナは重症化しないからといって、決して軽く見てはいけません」
※女性セブン2020年8月20・27日号