誰もが夢見るものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、2020年の競走馬セレクトセールについてお届けする。
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北海道苫小牧市のノーザンホースパークにやってきた。セレクトセールだ。
日本競走馬協会の主催で1998年より続く世界有数のセリ市である。サラブレッド流通の活性化のため、上場される競走馬を厳選していることから「セレクト」の命名がある。今年は7月13、14日の2日間。新型コロナの国難は治まる気配もなく、人の密集が懸念され、開催は危ぶまれた。しかし競馬界の未来のためにガッツで開催にこぎつけたのだった。
今年は雰囲気が違う。人は少なく風通しはいいものの、どこかピリピリしていた。馬以外はマスク着用で、そのせいかすべての人間の眼光が鋭く光り、まさにセリ市といった緊張の塩梅なのである。とはいえ、馬が好きで競馬を愛する思いは同じ。1日目の落札価格のトータルは昨年の107億3200万円に及ばなかったものの、2年連続で100億を突破。上々の活況であった。
まず1歳のセリで度肝を抜かれた。なんといっても目玉はディープインパクト産駒だ。大種牡馬が昨年亡くなったため、今年生まれた子が最後なので、セリの主役になるだろうと予想されたわけだが、それにしてもド級のインパクト。13頭上場で9頭が1億円超え。うち2頭が落札価格の記録(3億6000万円)を更新した。「フォエヴァーダーリングの2019」(4億円)と「シーヴの2019」(5億1000万円! 国内1歳史上最高)。ディープ産駒だけで計約25億。落札価格のトータルが104億2800万円だから、4分の1をディープ産駒が占めた。