現在、日本の音楽業界で大きな話題となっているのが、オーディション番組『Nizi Project』から誕生したK-POPグループ「NiziU」だ。デビューに向けてレッスンを重ね、厳しいサバイバルを繰り返していく少女たちに、多くの視聴者が感情移入していった。
人々を魅了するオーディション番組だが、その人気の源流は1970年代にあるという。
◆すべては伝説の番組『スター誕生!』から始まった
1970年に視聴者参加型番組として始まり、人気を博していたのは、読売テレビ制作の『全日本歌謡選手権』(1970~1976年、日本テレビ系)だった。同志社女子大学メディア創造学科教授の影山貴彦さんが解説する。
「この番組はアマチュアも参加できましたが、グランプリをとったのは、五木ひろしさん(72才)や八代亜紀さん(69才)など、すでにレコード会社に所属している歌手がほとんど。素人がスターになるというより、新人歌手の登竜門のような番組でしたね」
この1年後、オーディション番組として『スター誕生!』(日本テレビ系、以下「スタ誕」)がスタートする。
当初から審査員として参加していた作詞・作曲家の中村泰士さんは、次のように当時を振り返る。
「作詞家の阿久悠さん(享年70)が、日本テレビに企画を持ち込んで始まった番組です。最初は、認知度を上げるために、新御三家のひとり、野口五郎さん(64才)など、すでに活躍していたアイドルに、ゲスト出演してもらっていました」(中村さん・以下同)
「スタ誕」が当時、画期的だったのは、事務所の垣根を越えたオーディション番組だったことだ。
「出場者が予選、本選と厳しい審査を勝ち抜き、合格者が集まったところで、3か月に1回決勝大会を行っていました。決勝大会で参加者が歌い終わって、司会者が『さあ、どうぞ』と声をかけると、レコード会社や芸能事務所関係者が社名の入ったプラカードを挙げてスカウトをするわけです」
この番組からデビューした『花の中三トリオ』の山口百恵(61才)、森昌子(61才)はホリプロ、桜田淳子(62才)はサンミュージックへ。ピンク・レディーはT&Cミュージックに所属し、ビクター音楽産業(当時)からデビューを果たす。
「『スタ誕』は、収録の前に下見会というのがありました」
そう明かすのは、ピンク・レディーの未唯mieだ。