国や地方公共団体が経営する公企業の「第一」、一般的な会社のことを指す「第二」ではない法人のことを「第三セクター」という。日本では主に役所と民間が合同で出資・経営する企業のことを指して「三セク」と呼んでいる。その三セクとして運営されている北条鉄道は、「北条町駅」(兵庫県加西市)からJR加古川線と神戸電鉄に接続する「粟生(あお)駅」(兵庫県小野市)までの13.6キロ全線が単線。単線ゆえに運行本数を増やせなかった北条線が企業版の「ふるさと納税」を活用することで行き違い設備をつくり、沿線住民の利便性をあげている。ライターの小川裕夫氏が、貴重な地元の足として鉄道への投資を行う北条鉄道の挑戦についてレポートする。
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新型コロナウイルス禍により、鉄道会社は軒並み収益を悪化させている。外国人観光客で活況に沸いていたJR各社は言うに及ばず、地元民の足として機能していたローカル鉄道も利用者は激減。存亡の危機に瀕している。
特に、国鉄時代に赤字路線とされながらも地元民の足の確保を名目にして第3セクターへと移行したローカル路線は厳しさを増している。
赤字を名目に国鉄から切り離された路線は、県や地元の市町村といった地方自治体が出資して設立された第3セクターに引き継がれた。国鉄時代から赤字だったので、第3セクターに引き継がれたからといって経営状況が好転するわけでもなく、赤字は税金によって補填されてきた。全国の第3セクター鉄道は慢性的な赤字経営でも、それなりに利用者がいたことや自治体財政に多少とも余裕があったことなどから延命していた。
近年は少子高齢化の影響から、右肩下がりの利用者の減少が続いている。地方自治体の財政も逼迫し、利用者増は見込めないことから鉄道の存続を諦める自治体も出てきた。バスへの転換される路線も相次ぐ。
兵庫県加西市を走る北条鉄道も、1985年に国鉄の北条線から転換した第3セクター鉄道のひとつだ。北条鉄道は小野市の粟生駅と加西市の北条町駅とを結ぶ約13.7キロメートルの路線で、全線が単線区間。そして、本社のある北条町駅を除けば全駅が無人駅。そうした環境だけを見ても、いかにもローカル線であることを感じさせる。
そんな北条鉄道だが、このほど法華口駅に列車の行き違い設備が完成した。それまで平日ダイヤは1日17便の運行だったが、行き違い設備の完成によって列車の増発が可能になり、9月1日に運転本数を増やすダイヤ改正が実施される。ダイヤ改正以降は、朝夕を中心に5往復が増発される。
「JR・神戸電鉄との乗換駅でもある粟生駅を除けば、北条鉄道の全駅が加西市内に所在しています。加西市にとって、市民にとっても北条鉄道はなくてはならない大事な公共交通機関です」と話すのは、加西市ふるさと創造部人口増政策課の担当者だ。