休暇を楽しみながらテレワークする「ワーケーション」を安倍政権が猛プッシュし始めている。小泉進次郎環境相に続き、菅義偉官房長官も「新しい旅行や働き方のスタイルとして、政府としても普及に取り組んでいきたい」と明言。どうも「Go Toキャンペーン」の次はワーケーション推進のようだが、この夢物語のような構想、果たして政権の思惑通りに行くのか。ジャーナリストの山田稔氏が検証する。
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7月27日、官邸で「観光戦略実行推進会議」が開かれた。この会議、簡単に言ってしまうと、今年1月まではインバウンドにいかにお金を落としてもらうかが主な目的で、「2020年4000万人の実現に向けた観光政策について」といった観光庁の資料をベースにした議論が行われてきた。
ところが、新型コロナ感染の拡大でインバウンド4000万人計画は幻となり、議論の方向性が変化した。今年6月に開かれた会合では「日本の観光の再生」がテーマに。そして7月開催の会合では観光庁が「休暇の分散、ワーケーションの推進に向けた取り組み」について、環境省が「国立・国定公園、温泉地でのワーケーションの推進」という資料を出してきた。
コロナ禍拡大に伴う路線転換のようだ。環境省の資料にはこんな表現が見られる。
「新型コロナウイルスの流行以降、感染リスクの低いキャンプ場等の自然志向の高まりとテレワークの定着が進み、ワーケーションの機運が高まっている」
「ワーケーション推進に伴うロングステイとエコツアーの利用促進により、withコロナ時代の地域経済の下支えや平日の観光地の活性化を目指す」
どうやら環境省はやる気満々のようである。
ポスト・コロナの目玉観光政策
英語のワークとバケーションを合わせた造語のワーケーション。旅先で休暇を楽しみながらテレワークするというスタイルは、新自由主義の本家・米国で生まれたものらしい。2015年のウォール・ストリート・ジャーナルの記事の中に、「まだ数は少ないものの、休暇と仕事の一体化を上司に願い出る人が増えつつある」としてワーケーションの概念についても説明している。