NHKの長い歴史の中でもトップクラスの人気を誇った女子アナが有働由美子さん。オリンピックや紅白歌合戦など、数々の看板番組を歴任し、NHK退職後もフリーで活躍する彼女は、新人時代から破格の存在だったという。大阪支局時代、彼女の教育係だった堀尾正明氏(現フリー)が、破天荒すぎる有働アナの新人時代について証言する。
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有働はとにかく発想力や取材力、それを分かりやすく伝える能力に長けていて、入社当時から光った存在でした。飲みっぷりもいいから、男同士のような感覚で飲みに行ってましたね。
とにかく新人らしからぬ度胸がありました。ある時、有働が深刻な顔で「私、水子の霊が見えるんです。堀尾さんには3体憑いてますね」って言うんですよ。僕が不安そうにしていると、「膝に憑いている坊やには名前があるみたい。聞きたいですか?」って言うからますます怖くなって。恐る恐るその名前を聞いたら「その子の名前は膝小僧です」だって(笑い)。本当、NHKぽくない人でしたよ。
ヒドい悪戯をされたこともありましたよ。生放送で僕がある原稿を読む時に、インカムから微かに「痛い……」って声が聞こえてくるんです。僕は動揺して噛んでしまったんですが、実はそれが有働の悪戯だと分かって、局長も激怒する事態になってしまった。でも有働への期待の高さもあって、お咎めなしで済んだんです。大阪時代は本当に肝を冷やされっぱなしでしたね。
彼女には常々“女子アナの枠にはまるな”“自由にやれ”と指導していた。十分にその教えを実行しているなと思いますよ(笑い)。
【プロフィール】
◆ほりお・まさあき/1955年生まれ、埼玉県出身。1981年にNHKへ入局。『NHKニュース10』『サタデースポーツ』などを担当。五輪メインキャスターや「第55回紅白歌合戦総合司会」も務めた。2008年に退局、フリーに。
取材・文■河合桃子
※週刊ポスト2020年8月14・21日号