【著者に訊け】寺井広樹氏/『AV女優の家族』/光文社新書/800円+税
「離婚式」のプロデュースに、泣くことでデトックスを図る「涙活」の提唱。はたまた経営難を逆手に取った銚子電鉄では「まずい棒」の商品開発まで──。一見脈絡のない自身の興味の対象に関し、「崖っぷちの状態にいる人など、建前ではない人間の素に、興味があるのでしょうね」と寺井広樹氏(40)は分析する。
本書『AV女優の家族』は、白石茉莉奈、板垣あずさといった人気女優たちに、業界最大のタブーとされる「家族の話」を訊くインタビュー集。確かにテーマは「素」以外の何物でもない。だが女優は虚構に生きてこそ女優でもあり、各々の成育歴や素顔を知れば知るほど、「リスペクトし過ぎて欲情できない自分」という思わぬ収穫まで得てしまう、胸中複雑な寺井氏であった。
「女優さんは仕事に対してプロ意識が凄く高い。そして彼女たちを人間として尊敬すればするほど、興奮できなくなっちゃうんですよね……。借金を抱えているとか男に騙されて仕方なくやっているなど、後ろ暗い事情がある方が興奮するのはなぜだろうと思うほどです。
特に最近の女優さんは自らの意志でこの道に入っていて、高い美意識で仕事に臨む姿勢は、アーティストと同じです。見る人に喜びを与えるべく演技や計算をし、ファンタジーの戦略的な作り手なのです。それを徒(いたずら)に現実に引き寄せたりすれば、興奮が萎んでしまうのも道理なのかなあと思いました(苦笑)」