アメリカの各種世論調査では、引き続きバイデン氏がトランプ大統領を大きくリードしている。その差こそ少しずつ縮まっているとはいえ、バイデン氏が圧倒的に有利に選挙戦を進めていることは疑いないように見える。しかし、政治史や社会史に造詣が深いライターJohn Kudla氏は、この世論調査結果には落とし穴があると指摘する。
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最近の世論調査の結果から判断すると、かなりの割合の保守派の有権者や、おそらく穏健派の有権者さえもが失意に陥っていることが見てとれる。
7月19日に実施されたABCニュースとワシントン・ポストによる世論調査で、ジョー・バイデン氏がドナルド・トランプ氏を15ポイントリードしていたことに驚いていない人もいるだろうし、7月26日に実施されたCBSニュースとユーガブによる世論調査ではバイデン氏が10ポイントリードしていた。最新のエコノミストとユーガブによる世論調査ではバイデン氏が9ポイントリードしている。各種調査の平均値を算出しているReal Clear Politicsの調査を振り返ると、トランプ氏がバイデン氏を上回った最後の世論調査は2020年2月であり、ほぼすべての世論調査でバイデン氏がそれ以前から支持されている。
ただし、前回2016年の大統領選挙でも、同時期の世論調査ではヒラリー・クリントン候補が平均で4.7ポイントリードしていた。2020年の世論調査を見ると、バイデン氏は平均9.8ポイント上回っているから、たしかにそれよりは大きな差がある。本当にトランプ氏はそんなに人気が落ちたのだろうか。実はこの差には、5月25日のジョージ・フロイド事件(黒人が白人警官の制圧によって死亡した事件)が大きく関係しており、それ以前のバイデン氏のリードは平均5.2ポイントで、2016年のヒラリー候補と大差はないのである。
7月16日のギャラップ世論調査に注目してほしい。ジョージ・フロイド事件が起きた2020年5月から2020年6月までの間に、共和党を支持するアメリカ人は44%から39%へと5ポイント低下した。これはバイデン氏が支持を上積みした分とほぼ同じ。この変化は有権者の一時的な感情にすぎなかったのか、それとも全体の5%にあたる共和党員が民主党に永久に移ったのか。これは私の推測だが、彼らのほとんどが、今は共和党員であることを認める時期ではないと判断したのではないかと思う。