一口にパラスポーツと言っても、障害の種類(身体障害、知的障害など)やその程度ごとに同じ競技でもクラスは細かく分かれる。特に身体障害者向けでは、義足や義手、車椅子などで競技専用の道具が用いられている。それらにかかる費用は、場合によっては相当高額なものとなるが、パラアスリートたちはどう工面しているのだろうか。
競技に使う道具が選手のパフォーマンスに与える影響は大きく、仕様や性能、その調整などに妥協は許されない。パラリンピック東京大会に陸上100mと走り幅跳びで出場を狙う小須田潤太選手(29)は、競技用の大腿義足にかかる費用についてこう明かす。
「切断面(断端)を収納するソケット部分が20万〜30万円、膝の部分の『膝継手(ひざつぎて)』、足首部分の『足部(そくぶ)』を合わせて60万〜70万円ぐらいします(計100万円程度)。膝継手と足部は既製品ですが、それでも高価です。オーダーメイドのソケット部は、私の場合は日常用と兼用ですが、ソケット部を競技専用につくる人もいます。しかも競技用義足の足部(ブレード部分)は消耗品なので、激しくトレーニングすれば1年ぐらいで新調する必要があります」
日常用義足の購入には各種公的保険が適用されるが、競技用義足は全額自己負担で購入するしかない。小須田選手によると、さらにウェアやシューズ代、練習場を借りる費用で年間30〜40万円が必要で、試合が遠方であれば遠征費などもこれに加算されるという。ちょっとした中古車を買うぐらいの費用が、競技を続けるだけで毎年かかってくるのだ。
小須田選手の場合は、社員として勤務しているオープンハウス(総合不動産会社)が用具の購入・メインテナンスから遠征の渡航費まで、競技にかかる費用をすべて支出している。しかし、そうした環境はパラアスリートの中でもかなり恵まれているほうだという。
社会人選手の場合、プロスポーツ選手として、企業からスポンサー契約を得て競技に専念できるのはほんの一握りでしかない。選手は、それぞれがさまざまな方法で日々の活動費を捻出しているのが現状だ。