東京五輪をめぐっては世論も「予定通り来夏開催」と「中止」で割れている。日本にとって最良の決断とは何なのか。愛知医科大学病院勤務医で感染症の専門家である後藤礼司氏(38)は次のように考える。
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新型コロナは現在、世界的に高い警戒レベルの指定感染症に位置づけられています。感染拡大が来年7月まで続く可能性もありますが、それでも感染管理を徹底すれば五輪は開催できると考えます。参考になるのが、アメリカのプロバスケットリーグ・NBAの感染予防策です。
NBAは、フロリダ州のディズニーワールドリゾート内のホテルに「バブル」と呼ばれる隔離地域を定め、選手と少数の関係者を収容して競技を行なっています。バブル内の選手やスタッフは、外部との接触を厳しく制限されており、感染のない状況を作り上げています。
東京五輪でも、選手とスタッフをバブルに隔離すれば開催は可能です。バブルに入る前に選手とスタッフをコロナの潜伏・感染期間として十分な2週間隔離する。その上でPCR検査を実施し、陰性者だけをバブル内に入れ、陽性者は入れずに治療する。バブル内に隔離された人は、競技や練習などの必要な時間以外はホテルの個室に閉じこもり、外に出られないようにする。NBAのようにスタッフや取材記者も少数に絞り、無観客で行なえばいい。
ただ、五輪規模の巨大イベントでこの方法を実施するには、何よりも費用の問題がある。NBAではPCR検査を2日に1回のペースで実施しています。NBAには多額の放映料があるため費用を捻出できていますが、これを東京都が賄うのは難しい。費用の問題さえクリアできれば、感染防止と開催は両立できる、というのが私の持論です。
【PROFILE】ごとう・れいじ/愛知医科大学病院常勤医。専門は感染症・循環器。新型コロナに関してCBCテレビなどのメディアで情報発信を行なう。
※週刊ポスト2020年8月28日号