妻と子供夫婦、孫2人の6人暮らしをしていた70代男性が7月下旬、新型コロナウイルスに感染した。男性は隔離先が決まらず自宅療養となり、保健所の指示通り生活空間を分け、こまめなトイレの消毒など感染防止策を行っていた。しかし、わずか1週間後、一家全員に感染が広がった──。
この一家のケースが「家庭内感染」の恐ろしさを物語る。
すでに家庭内感染は激増している。8月15日の東京の感染者385人のうち、感染経路がわかっているのは136人。そのうち家庭内感染は半数近い64人を占め、最大の感染経路となった。
「この先はさらなる家庭内感染の増加が見込まれます」と指摘するのは、昭和大学客員教授(感染症)の二木芳人さんだ。
「いまは保健所の事務処理がパンクして自宅療養者が増え続けています。また、市中感染が拡大し、多くの軽症者や無症状者が知らない間に自宅にウイルスを持ち込んでおり、陽性が明らかになる前の段階で家庭内感染が広がっています」(二木さん)
本誌・女性セブンは感染が再爆発する前から再三にわたり、本当に怖いのは「夜の街」ではなく「家族道連れ感染」であると警鐘を鳴らしてきた。その懸念がまさに現実になっている。
市中感染が広がる現在、軽症者や無症状者を通じて家庭内にウイルスが持ち込まれることは避けられない。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんが対策を説明する。
「専門病院などで徹底されているウイルス汚染度の区分けが家庭でも応用できます。最も感染リスクが高い汚染区域のレッドゾーン(玄関)、最もリスクが低いクリーン区域のグリーンゾーン(キッチン、リビング、寝室など)、両者の中間の注意区域のイエローゾーン(浴室、洗面所、脱衣所など)に自宅を分けることをおすすめします。
帰宅後、最も危険な玄関では手指を消毒してかばんをアルコール清掃してから室内に持ち込むなど、各ゾーンの危険度に応じた感染対策を講じることが大事になります」
ウイルスを持ち込まないためにも帰宅時は玄関で服を脱ぎ、頭髪などに付着したウイルスを除去するためにすぐにシャワーを浴びることを心がけたい。決してグリーンゾーンに直行してはいけない。
坂根Mクリニック院長の坂根みち子さんは「家庭内ではポイントを押さえた管理が大切」と指摘する。
「主な家庭内感染のルートは飛沫感染と接触感染です。家庭内では会話の飛沫に注意して手洗いを欠かさず、歯磨きのコップやリネン類は別々に分けて使い、感染リスクを分散しないことが大切。ダイニングテーブルやリビングのソファは、誰がどこに座るかをあらかじめ決めましょう」
実際に家庭内のどこでどう気をつけるべきかの詳細は、画像を参照してほしい。
※女性セブン2020年9月3日号