WHO(世界保健機関)によれば7月末時点で、世界で開発中のワクチン候補は165種類。そのうち治験に入ったものは26種類ある。数千~数万人規模を対象にした「第三相」まで到達しているもののひとつが、イギリスの製薬大手「アストラゼネカ」のものだ。日本政府はアストラゼネカと1億2000万回分の供給を受けることで合意。加藤勝信厚労相は「2021年3月までには3000万回分を確保する」と発表した。
ただし、ワクチンの価格は、まだ決まったわけではない。『ワクチン診療入門』の著書があるナビタスクリニック川崎の谷本哲也医師の解説。
「正式ではありませんが、アストラゼネカ製は1000円くらいといわれている。ただしこれは海外の予想価格で、国内はもう少し高くなりそうです。接種費用を公費で賄うと、ひどい副作用などが出た時に責任を問われる。新型インフルの時は、自治体によって対応が異なり、65歳以上は公費負担、それ以外の人は数千円の自己負担で受けられる、といったケースもみられた。今回も同様になるかもしれません」
新型インフルの時は、ワクチンの供給量が不足し、街のクリニックまで行き届かない事態も起きたが、今回はどうか。
「各地に大規模なワクチンセンターを作れば、他の患者さんと混ざることなく効率よくワクチンを打てる。しかし、日本ではワクチンは開業医の“重要な収入源”になっている側面があり、ワクチンセンター設置に異論が出るかもしれません。2007年に麻疹が大流行した時はワクチンセンターに代わる簡易スペースを作って対処しましたが……」(同前)
大混乱を避ける方策も考えなくてはならない。
※週刊ポスト2020年8月28日号