放送作家でコラムニストの山田美保子氏が独自の視点で最新芸能ニュースを深掘りする連載「芸能耳年増」。今回は、気象予報士の新潮流について。
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各地に甚大なる被害をもたらした「令和2年7月豪雨」に続いて、8月は40度超えの猛暑、酷暑がワイドショーやニュースのトップ項目となっている。そこに登場するのは、各番組専属のお天気キャスター。原稿を読むだけの「お天気お姉さん」ではなく、資格を取得している気象予報士らである。
かつては“ツッコまれ困り果てる”が主流
かつて気象予報士は、予報が外れた際、MCからツッコまれ困り果てる、たとえばTBSの「森田さん」(森田正光氏)のようなタイプが人気だった。現在、森田氏は、『Nスタ』でのホラン千秋との掛け合いが視聴者に人気。このパターンは『ひるおび』の気象予報士、森朗氏に受け継がれている。もちろん、森氏にツッコむのはMCの恵俊彰。恵が夏休みなどでスタジオを留守にするときは、弁護士の八代英輝氏がその役割を担う。
『とくダネ!』(フジテレビ系)の「あまたつ」こと天達武史氏は、「森田さん」に次いで、視聴者には“顔と名前がもっとも一致する気象予報士”だと思うが、やはり、ツッコまれキャラ、困り果てキャラだろう。
このタイプ、女性の気象予報士には見当たらないのである。女性の場合、若くして難しい試験に合格した知性に加えて、美貌を兼ね備えている人が多いからなのか。あるいは、余計なことを言うと「ハラスメントだ」と問題視されてしまうからなのか。たとえ予報を外しても、男性MCからツッコまれて困り果てるというシーンは見られない。
“イケメンだけではない”気象予報士
そんな中、全く新しいタイプの気象予報士が出てきた。『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で「かたおか天気ショー」を担当している片岡信和(しんわ)氏、35歳である。
183センチと長身で小顔。同じく長身であり、男性アナウンサーの中では、もっとも小顔でスタイルのいい羽鳥慎一キャスターと並んでも、「それ以上」にシュッとしている。
登場は2020年3月30日。つまり、今年度からのレギュラーだというのに、羽鳥キャスターら出演者からのツッコミを待たず、前へ前へ出てくる、いわば“自家発電タイプ”。記憶をたどっても、新人でここまで場慣れしている気象予報士はいなかっただろうと思い調べてみたら、彼は気象予報士以外に「俳優」の肩書をもっていた。
ワイドショーやニュースでの出番がどんどん増え、スタジオとの掛け合いや出演者からの質問に動じることなくスラスラと喋るためにも、気象予報士の中に、実は“喋り手”だった…という人が増えているのは事実。
『news every.』(日本テレビ系)の「木原さん」(木原実氏)は「俳優」であり「声優」。『ミヤネ屋』『ウェークアップぷらす』(いずれも、読売テレビ制作・日本テレビ系)の「蓬莱さん(蓬莱大介氏)も学生時代、タレント活動をしたり、舞台に立った経験もある「俳優」志望の青年だったという。あの『劇団四季』がPRを兼ねた特別企画で、各局ワイドショー出演者のアナウンサーを人気ミュージカルのワンシーンに“主演”させることがあるが、2015年、『ミヤネ屋』と『劇団四季』がタッグを組んだ同企画で、「シンバ」役に選ばれたのは蓬莱氏だった。
「気象予報士」は、今、ワイドショーやニュースにもっとも出演しやすい「資格」だということは、局のアナウンサーらにも当てはまる。女性アナウンサーが家庭教師をつけてまで必死に資格をとろうとするのは、「30才定年説」を回避できるからに他ならない。男性でも、アナウンサーとしてメインで番組はもてなくても「気象予報士」として天気コーナーには定期的に出演することができるのだ。TBSの人気アナウンサーだった小林豊氏は、このパターンの代表格だったように思う。
そして「俳優」の「気象予報士」たちも、この資格があれば、本業以外のテレビ番組に出ることが可能となるのだ。
ドラマや戦隊モノに出演、CDデビューも
片岡信和氏に話を戻そう。東京都出身で、2006年、大学時代、オーディション情報誌を見て自ら所属事務所に応募し芸能界入りを果たしたという同氏は、翌年にはテレビドラマに初出演。その翌年には『炎神戦隊ゴーオンジャー』(テレビ朝日系)に出演している。
その後、自作の楽曲でCDデビューも果たし、ミニアルバムをリリース。プロフィールでもっとも驚くのは気象予報士の試験に合格したのが2019年の3月で、その1年後にはもう『羽鳥慎一モーニングショー』で「かたおか天気ショー」なるレギュラーコーナーをもっていることだ。
まさに「前へ前へ」。恐らく、彼は、俳優よりもテレビ番組にコンスタントに出られるのは「気象予報士」だと気づき、猛勉強をして資格を取得したのではないか。好みもあるだろうが、私が知る限り、全国の男性気象予報士の中でもっともイケメン。羽鳥キャスターも、玉川徹氏をはじめクセの強いコメンテーターを相手にしているときよりも、片岡氏と絡むときは明らかに安らいだ表情でコーナーを進行している。
気象予報士が教えるワンポイントストレッチ
そんな片岡氏のリードで、同時間帯ワイドショーの中ではもっとも硬派な『モーニングショー』のスタジオが弾ける瞬間がある。氏が教える「ワンポイントストレッチ」だ。
短い「かたおか天気ショー」のラストなので、ほぼ毎回、時間切れになってしまうのだが、件の玉川氏はコメンテーター席を離れてフロアに。元・乃木坂46のメンバーだった斎藤ちはるアナは即座にストレッチに参加する。彼女の表情がもっとも明るくなるのも同コーナーで、片岡氏のポーズの通り、瞬時に身体をくねらせる様は、実に見事。“乃木坂ファン”“女子アナマニア”には堪らないコーナーではないかと思う。
とはいえ、すぐにスタジオが温まるワケでもないし、繰り返しになるが本当にアッという間に終わってしまうコーナーだし、カットアウトでCMに入ってしまう日も少なくないなのだが、片岡氏は終始、動じることもなく、自身のテンションをキープしたままなのだ。
ものすごい「ハートの強さ」も感じてしまう。気象予報士としてのキャリアがまだ浅いからか、春先から「コロナ」で視聴率を稼いできたからなのか、『モーニングショー』が冒頭から「天気ネタ」をやることは滅多にないし、やったとしても、そこに片岡氏が出てくることもない。彼の定位置は、いまのところ、番組エンディングに近い「かたおか天気ショー」のみ。そして同コーナーがバズっているふうでも、まだない。
が、思えば同番組のコメンテーターであり、タレント気象予報士の第1号でもある石原良純もまた、「俳優」出身で、『FNNスーパーニュース』(フジテレビ系)の天気コーナーで人気を博し、現在に至っている。
「俳優」→「気象予報士」の後、「タレント」「コメンテーター」でブレイクする気マンマン(に私には見える)片岡信和氏が新しいタイプの気象予報士であることは間違いない。おおいに期待している。