顔の形状からその人の内面を言語化し、コミュニケーションに役立てられる学問が「相貌心理学」だ。1937 年にフランスの精神科医ルイ・コルマンがつくった分野で、「顔」を客観的なデータとして分析し、その人の人間性や性格を見立てていく。正確な診断を行えば、精度は99%にも及ぶという。日本で唯一の教授資格取得者であり、世界にも15人しか存在しない相貌心理学者の佐藤ブゾン貴子さん(44才)は、「生活のあらゆるシーンで役立てることができます」と話す。
「顔さえあれば、どんな人のことでもわかります。たとえば、小さな子供は感情表現がうまくできない子もいますが、相貌心理学で性格を理解すればコミュニケーションの取り方がわかってきます。占いではないため“あなたは何年後に結婚します”といった未来予想はできませんが、“あなたと相性がいいのはこういう顔です”とアドバイスすることは可能です。仮に、外見重視で相手を選んだとしても『この人はこういう性格だ』と理解した上なら、『こんなはずじゃなかったのに…』という後悔は回避できるはず」
性格を変えたい人は、メイクで変えても構わない。
「意志が弱く周りに流されやすい人は、アイラインで目尻を上げれば意志が強くなっていきます。メイクによってあなたの印象が変わるので、相手の反応が変化し、その変化があなたの内面にも影響を与えます」(ブゾンさん・以下同)
つまり、「顔」と「内面」はつながっているということ。相貌心理学を用いれば、高視聴率ドラマの“カラクリ”も見えてくる。
「わかりやすいのは武田鉄矢さんが演じた『3年B組金八先生』。時代背景もあり、放送初期の金八先生は体罰もいとわない熱血教師でした。その当時の武田さんは顔に張りがあり目元も鋭く、“おれの意見を聞け”という強気の顔をしている。それが年を追うごとに金八先生は穏やかな人柄に変化し、武田さん自身もぽっちゃりして目尻が下がってきた。そうやって役と役者の顔が一緒に変化する作品はヒットします。『当たり役』と呼ばれるキャラクターを演じている人は、演技力だけでなく『顔』が視聴者に与えている影響も大きいのです」
初対面の人と会ったとき、“優しそう”“怖そう”など無意識に相手を分類してしまうことがあるが、第一印象から得る直感は意外と的確だという。
「そのとき、『あの人はブランド品を持っているから自分とは合わない』など、持ち物や職業などのフィルターを通して見てはいけません。『見る目がない』とはそういうことです」
相手の顔色をうかがうばかりでなく、コミュニケーションはまず「顔」をしっかり見るところから始めたい。
【プロフィール】
佐藤ブゾン貴子さん(44才)/日本人唯一の相貌心理学教授。1億人を超える顔分析に基づく相貌心理学の分析テクニックを駆使し、講演など幅広く活動。著書に『人は顔を見れば99%わかる フランス発・相貌心理学入門』(河出書房新社)。
※女性セブン2020年9月3日号