北海道の日本海側、渡島半島の付け根にある人口2900人の小さな町が「核のゴミ」問題で大揺れだ。核のゴミの最終処分場候補地選定に向けた国の文献調査に、北海道寿都(すっつ)町の町長が突然、応募を検討する方針を表明し、8月13日に表面化したことから大騒ぎとなっているのだ。漁業と水産加工業の町にいったい何が起きているのか──。ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
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核のゴミとは、原発で使用後の燃料を再処理する過程で出る強い放射能を持つ「高レベル放射性廃棄物」。ガラスで固めて特殊な容器に入れ、地下300メートルよりも深いところに貯蔵する計画だが、処分地を巡っては候補地さえ出てきていない状況だ。
3年前には経済産業省資源エネルギー庁が、どの地域が処分場に適しているかを色分けした「科学的特性マップ」を公表したが、それでも名乗りを挙げる自治体は出てこなかった。将来的な汚染を懸念し、どこも引き受けたがらない施設なのである。2007年に高知県の東洋町が調査受け入れを表明したものの、住民の猛反対で撤去した。それっきり、どの自治体も手を挙げようとしてこなかった。
そんな閉塞状況のなかで、突如として出てきたのが寿都町の片岡春雄町長(71)の前向き発言だ。町長はメディア各社の取材に、「コロナで相当この町も痛めつけられて、来年度以降の財政はどうなっていくのか。(調査の)交付金をうまく活用できればありがたいよね」などと語っている。
町長が応募の意向を示した文献調査は、歴史的文献で過去に起きた地震の有無などを調査するもので2年程度かかる。その後、ボーリングなどの概要調査(3年)、精密調査(約14年)を経て最終処分地の建設地を決定するという流れとなっている。
寿都町は、その第一関門の文献調査に向けて、8月26日に町議会議員や漁協をはじめ産業団体の代表者ら約30名を集めて意見交換会を行う予定だ。