テレビなどでも怪談特集が組まれるような季節になってきた。オカルト的恐怖とは別に、思わず畏怖の念を感じる場所、それが「禁足地」(足を踏み入れてはいけない場所)だ。これらは果たしてどんなものなのか。具体的にどこが該当するのだろうか…。
●教えてくれたのは…
怪談・オカルト研究家 吉田悠軌さん/怪談サークル「とうもろこしの会」会長。怪談の収集、怪談現場や怪奇スポット、奇祭探訪をライフワークとする。著書に『禁足地巡礼』ほか多数。
人はなぜ、“行ってはいけない場所”に惹かれるのか。 「肝だめしは、江戸時代以前から行われていました。恐怖を体験するという行為は、大人になるための通過儀礼だったのではないかと推察します。死や神秘が遠くなっている現代こそ“異界を体験する”ことは重要。ルールとマナーを守ることを前提に、肝だめしはした方がいい」(吉田さん、以下同)
あらゆる恐怖スポットを知り尽くす吉田さんだが、残念ながら霊感はゼロ。どうしても体験したくて、知人から「深夜の吉原がこれまででいちばん怖かった」と聞き、江戸幕府公認の遊廓として栄えた東京・台東区の旧吉原を友人4人と訪れたことがある。
「カメラを回しながら前を歩いていると、後ろの3人が時間差で『あっ!』と声を上げた。3人とも口を揃え『左から右に、強烈なおしろいのにおいが通り過ぎた!』と。ぼくはやはり、何もにおわなかったですね(苦笑)」
それでは吉田さんがん選ぶ4つの「禁足地」を紹介する。
オソロシドコロ(長崎県)
オソロシドコロ=恐ろし所との名のとおり、聖地・龍良山にある、立ち入ることもタブーとされた原生林。「超人である天道法師を祀った石塔が『表八丁角』、その母親を祀るのが『裏八丁角』といわれています。間違って森に入り、これらの石塔を見てしまったら、履いていた草履を頭にのせ『インノコ(犬の子)』と唱えながら後ずさりして戻らなければ、命を落とすとされています」。
天道信仰は太陽崇拝がもととなっており、舟に乗って対馬に流された女性が太陽の光で妊娠し、生まれた男児が天道法師であるとされる。