土地の境界をめぐる争い、と聞くと、それは昔話だと思われるかもしれないが、現在も東京23区内にいくつも紛争地が存在している。そのなかから、お台場を巡るバトル、そして水をめぐる争いでもある埼玉県三郷市と葛飾区の未解決問題について紹介する。
江東区vs港区vs品川区のお台場バトル
都心の一極集中を回避するために進められた副都心建設計画。臨海副都心は、その一環で1995年に誕生した。
現在でこそ、通称「お台場」と呼ばれ親しまれているが、造成された当初は雑草が生い茂るだけの広大な埋立地だった。そのため、道路の整備や緑地化対策など、土地の管理に関わることによる財政悪化を懸念した江東区、港区、品川区の各区は、それぞれ土地の管轄を渋った。
青海地区に設定された境界点は、3区による壮絶な譲り合いの結果が生んだ妥協点でもあった。
遊水池が生んだ 東京と埼玉の譲れない一線
葛飾区の北東に位置する水元公園は広さ約96.3ヘクタールと東京23区で最大規模を誇り、憩いの場として親子連れなどに親しまれる水郷公園だが、水面下では境界をめぐる争いが続いている。
公園内の遊水池・小合溜(こあいため)とは江戸時代に水害を防ぐための治水事業の一環として整備されたもので、対岸は防波堤で水域一帯を葛飾区が管理してきた。一方の埼玉県三郷市は、一般的に境界は河川の中心なのだから小合溜の中心が境になると主張。
両者の協議は折り合いがつかず、現在も4キロ以上におよぶ区間が都県境未定地となっている。
※週刊ポスト2020年9月4日号