新型コロナウイルス感染症にまつわる給付金や協力金をめぐる詐欺事件が後を絶たない(時事通信フォト)

新型コロナウイルス感染症にまつわる給付金や協力金をめぐる詐欺事件が後を絶たない(時事通信フォト)

 筆者の取材によれば、持続化給付金に限らず、各自治体が配布した営業店舗などへの休業協力金を詐取する反社会的勢力の存在も確認されている。休眠会社や、営業実態のない店舗などの名義を買い取ったり乗っとったりして、給付金や協力金を詐取するのである。その詐取の範囲が急激に拡大し、SNSなどを通じて一般人をも巻きこんだ詐欺事件に発展した。

「個人を巻き込む以前は、関係者から足がつかないよう、もっと周到にやっていました。一般人を巻き込むようになってからは、誰が捕まろうがおかまい無しという感じ。結局逮捕されるのは一般人な訳ですから、どれだけやってもいい。簡単だから、中にはやりすぎてめくれる(バレる)奴も出てくるでしょうけども」(K氏)

 このK氏の言葉の通り、前述のように持続化給付金の不正な申請を100件以上行なったとみられる神戸市の男らが逮捕された。また、8月上旬に発覚した関東の大学生グループによる事件では、SNSなどを通じて申請するメンバーを集め、確定申告や給付金申請の手順を指南。その後、口座に給付金が振り込まれると手数料程度の金を申請名義人の手元に残して大半をグループが集金した。この手際の良さには驚くばかりだが、名義人を引き受けてしまった大学生が、詐欺罪に問われる可能性があることに気づいて行動して事件が露見したきっかけの一つとなったことを考えると、詐欺師らしい慎重さに欠けていると思わざるを得ない。

 特殊詐欺でも、中高生や老人が受け子を担うパターンが珍しくなくなったが、給付金詐欺においても結局、最後は弱者が使い捨てされるようになった。とはいえ、弱者とされる側の「罪悪感」もコロナ禍の影響で薄れてきてしまっているようにも見える。「遠くの親族より近くの他人」ではないが、ひどく困窮している時に、カネをくれるという人物が目の前に現れれば、その人物の素性など考えにくいし、親族の援助なしの助言など聞く気にもならないのだ。今後、ウイルス感染がさらに拡大、第二波、第三波…がやってきた時、こうした流れはより加速するに違いない。

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