その日、香川県高松市のレクザムスタジアムでは背番号3をつけた香川オリーブガイナーズのGM兼総監督である松中信彦の声が響いていた。
ナイトゲームとはいえ、蒸し暑さの残るなか3時間超の長丁場。総監督としてベンチ入りしていた松中は、打席に向かう選手一人ひとりに丁寧にアドバイスを送るだけでなく、チームの士気を高めようと誰よりも声を張っていた。
“天の声”の効果か、試合はオリーブガイナーズが愛媛マンダリンパイレーツに13-1と快勝。「平成唯一の三冠王」は、ほくそ笑んでいたに違いない。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、延期されていた今季の四国アイランドリーグplusは、約3か月遅れで6月20日に開幕。現在は人数を制限しながらも、客席を一部開放し試合運営を行なっている。
現役時代はホークス一筋で、長らく主砲として常勝チームを牽引した松中も、2015年の引退から約5年。近年は野球解説のほか、高校時代に全国大会に出場した長男の影響もあってハンドボールの普及活動にも力を入れていたが、今季からGM兼総監督として四国の独立リーグで新たな挑戦を始めている。
「“なんでプロ野球じゃなく独立リーグなの”ってよく言われます。ただ僕的には何の違和感もなく、指導者として最高のスタートが切れるんじゃないかと思っているんです。GMという仕事は、なかなか経験できることではないし、引き受ける際も迷いはありませんでした。現場のトップはもちろん監督で、総監督の僕はサポート役。ただ、監督を含めほとんどプロ野球経験がいないチームなので、指導やアドバイスは積極的にしています」