税金の取り分をめぐる自治体の熾烈な争いは、境界線を挟んでしばしば巻き起こる。東京都でそうした争いが生み出したのが“狛江市に住む世田谷区民”問題だ。東京23区の電話番号の市外局番が「03」であることは知られているが、狛江市の市外局番も「03」で始まることで知られる。
2000年、日本有数の高級住宅街である成城(世田谷区)に高級マンションが建設された時のこと。世田谷というブランド力で資産価値を高めるため、開発事業者はマンションの住所を「成城」で申請した。
ところが、全8棟のうち6棟は世田谷区、2棟は狛江市という境界上の立地だったため、狛江市はこの申請に反対。狛江市側の2棟は全70戸で、年間約5000万円の住民税が見込めたからだ。
2002年、全8棟の住所を「成城」にすることで合意し、これによって“狛江市に住む世田谷区民”が誕生した。
※週刊ポスト2020年9月4日号